BE THERE vol.2

Beautiful Name-YS ページ8

やっぱり病院なんて。
大した用事も無く―来るべきじゃなかったな。
いや、俺にとっては大事な用事のつもりなんだが。


出会ったばかりの小さな子どもが、死を目前に控えていて。
きっとここには・・・あのちびっこに限らず、まだまだそういう人が大勢いるのだろう。
そして同じようにそれを覚悟している、家族も。


あーーなんか。思い出しちまった・・・。
もう随分前のことではあるが、うちのマンネが―事故に遭って搬入されたときのこと。
もちろんこの病院では無いんだけど、な。


なかなか目覚めない弟の身を案じながら―
俺たちメンバーは毎日、心臓が潰れるんじゃないかって思いで。
それでも歌や仕事はなんとかこなさなきゃいけない日々で。


その合間を縫って。
何度も見舞いに・・・病院にも足を運んだな。


あのときは、病院特有の消毒液みたいな匂いが生理的なトラウマになりそうなくらいだったのに。
喉元過ぎればなんとやら、で。
今はもう、そんなものは無かったようになった俺がいて。


あまり自発的には思い出したくはない、が。
決して忘れてはいけないことを―取り戻した気分だった。


YS「クロスケさん、か」


あのちびっこがつけてくれた俺のあだ名。
仲良くしたいってんでつけたのだとしたら―あだ名というより愛称だな。
だったら俺も敬意を払って、そういうので呼ぶべきか。


小さいから・・・ちび太、とかか？
いや。いくら子どもとはいえ、もうすでに男としての誇りを持ってるようなヤツだった。
男に対して、それじゃ失礼だな。


だったら・・・


YS「―のび太」

「えっ？！」

YS「のび太。さっきの子の愛称。これからそう呼ぶことにする」

「え？え？！あの子にはラウくんって名前がっ＞＜」

YS「んーー。もう決めた＾＾」


ぎょっとしたような顔のミニちゃん・・・じゃなくてA(笑)
1週間前に、あの海で再会したときもこんな顔してたな？
それすらなんか可愛いが。


「ところで・・・ｼﾞｮﾝｳﾝさん？」

YS「んーー？」


今度はどこか不審そうな目になったAに、ふと顔を覗きこまれる。


「あ、あのぉ；今日はどうしてここに？」

YS「あ・・・」


出鼻をくじかれて、すっかりどっかに行っちまってた―
俺の大事な用事。
もうあの「123」という順番を待つ気はさらさら無いし、彼女も仕事中のようだ。


だから。


ここに来た本当の目的。
いい加減済まさせてもらわないと、な。

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