BE THERE vol.2

年上の人は好きですか？ ページ26

車のフロントガラスから見える景色と。
流れてくる音楽と。
なぜだか、なんとなく心地良いこの空間に―身を預ける。


ｼﾞｮﾝｳﾝさんは、相変わらず音楽に合わせてふんふんと口ずさんでいて。
どうやらこのCD、色んなアーティストの歌を集めたコンピレーションアルバムみたいなんだけど〜
今、彼が歌ってるのは女性シンガーのボサノバみたいな歌。


女性のものだろうが、どんなジャンルだろうが。
そんなハミングですら、彼の口から生み出されるものは―なんだか愛に満ちているようで。


全然、彼のことなんて知らないのに。
この人は歌とともに。
今までずっと生きてきたんだなって・・・わかった。


だけど、そうかと思うと。
ぴたっと歌うのを中断して、黙り込んだり。
まばたきをするのも忘れてるんじゃないっていう具合に、ジッと前を凝視してたり。


そのたびに私は彼の方に、ちょっとだけ顔を向けるんだけど〜
ｼﾞｮﾝｳﾝさん、そんなのも全く目に入ってないというか、気付いてないよね(笑)


考え事してる？
それともただボーーっとしてるだけ？
一応、今運転中なはずなんだけど〜だ、大丈夫かな；


どちらにしてもｼﾞｮﾝｳﾝさんって、こういう無言の「間」とか。
全然、気にならない人みたい。
私としては〜すごく助かるけど。私もおしゃべりが得意な方じゃないから。


だけど。


ｼﾞｮﾝｳﾝさんの持つ独特な空気に、ようやく少し慣れてきたかなって。
そんな風に思ったもんだから。
この沈黙から少し経って―最初に口を開いたのは、私からだった。


「ｼﾞｮﾝｳﾝさんって。日本では・・・兄さんって呼ばれてるんですね」

YS「そう＾＾」


ｼﾞｮﾝｳﾝさんは、まるで眠りから醒めたときのようにわかりやすくハッとしたあと。
いつもの調子のふわっと笑ったような声で、返事が返ってきた。


そんな彼と、お互いの顔を向き合わせないまま―目が合って。
つい笑いがこぼれてしまう。


YS「え・・・変、か？(笑)」

「い、いえ(笑)ただ・・・あんまりお兄さんとか年上っぽくないなって」


年上らしさは全く感じないわけじゃない。
強引なところは私よりも上手みたいだし〜あとは、こうやっていつでも穏やかというか。
ゆるっとした空気でいるというのも・・・彼の人柄だけではなく、年上ならではの余裕みたいなものを感じる。


でも、お兄さんらしさは・・・うーん(笑)


私のそんな言葉に。
ｼﾞｮﾝｳﾝさんは再びトランス状態に入ってしまったようだった。

Run to the Horizon.-YS→←作者より

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