拾弐 ページ15
・
冨「…何をしているんだ」
悲「見ずとも分かる
Aよ、おもてをあげよ」
『ぎ、義勇に悲鳴嶼さんまで…』
な、なんでここにいるの?
義勇たちも舞香に…?
そんなのイヤ、絶対にイヤだ!
これ以上は耐えられない
…早くここから立ち去ってしまおう
そう思い体の向きを変えるとパシッと腕を掴まれた
『っ!…ぎ、ゆ……お願い、離して』
冨「……」
そう言うも義勇の手は離れるどころか、力が強まっていく
ムリ、これ以上は耐えられないんだってば…!
お願い…お願いだからもう離して…
『…っ、義勇、お願い離して…』
震える声で必死に訴えかけるAの目には大粒の涙
それに気が付いた義勇はすぐさま、
他の者に見えぬようにAを抱き寄せる
『っ!?』
冨「…俺を信じろ」
『…え、』
…信じろって何を?
どうせ義勇も結局は舞香を信じてしまうんでしょう?
それなら…初めから優しくなんかしなくていい
『…信じない、どうせ義勇も──!』
悲「…案ずるな、お前が悪くないことは分かっている」
『悲鳴嶼、さん?』
…本当に?
私は無実だって信じてくれるの?
そう思ったら何か、気持ちがストンと落ちた気がして
途端に涙で濡らした頬をさらに濡らすくらいの涙が溢れてきた
『っっ!……信じて、いいの?』
義勇の服をぎゅっと掴み尋ねる
「「あぁ」」
迷わずそう応えてくれる声、真っ直ぐと見つめてくれるその瞳
その全てが今の私にはなかったから……だから
『…ありがとう』
久しぶりに言った感謝の言葉
最近はずっと謝ってばかりだったから…
味方がいるというものはとても嬉しく、心強いもので自然と口角が上がるのがわかった
冨「…A、行くぞ」
『う、うん』
…でもやっぱり不安は残るもので、
義勇たちは悪くないのに、
もしも今の私みたいになってしまったら?
ありもしない罪を被せられる辛さは私が1番身に染みて分かっている
だからこそ、義勇たちにはそんな思いはさせたくない
冨「…余計なことを考えるな、信じろと言っただろう」
『!!……うん』
心を読まれたようで一瞬ドキッと体がはねた
でもそれ以上に“信じろ”って言ってくれたことが嬉しい
宇「おいおい待て、どこに行くんだ」
冨「………」
悲「気にする事はない、行くぞ」
どうしたんだと言わんばかりの顔をしながら無言をつらぬく義勇と、私の手を優しくとってくれる悲鳴嶼さん
今、この時だけは怖いものなんてない、そう心の底から思えた
583人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小姐 - 更新楽しみにしています! (8月19日 16時) (レス) @page20 id: d78cf12dee (このIDを非表示/違反報告)
リリィなモモ(プロフ) - まさかの獪岳登場!?舞香に洗脳されてるとはいえ柱である夢主に対して鬼獪の時みたいな態度なの凄い😳 (8月14日 6時) (レス) @page20 id: e604e437d5 (このIDを非表示/違反報告)
Nami - 七夕から更新してない…?焦らずとも更新して、みんなそれぞれの彦星に会わせてあげて下さいね。😊 (7月19日 9時) (レス) id: 7f8b02d024 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 平和最高!!!獪岳出てきたのびっくりしました!悪女と獪岳に天罰をっ! (6月8日 16時) (レス) @page19 id: f401ce645a (このIDを非表示/違反報告)
にな(プロフ) - ゆ、夢主ちゃんがちょっと小悪魔なの可愛すぎる…♡ (6月7日 16時) (レス) @page19 id: ff6f5f6f85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:わきゃめサラダ | 作成日時:2023年4月9日 22時