参拾 ページ35
「それが俺の性分てか…懺悔みてェなモンだからねェ」
銀さんは自嘲気味に笑うと私の右手を掴んで刀を壁から引き抜いた。
「俺を殺したいなら殺せばいいさ。別に俺を殺したところで桂も高杉も動きはしない。俺はアイツらの仲間でも攘夷派でも無ェから」
彼は「さぁ、どうぞ」と言わんばかりに両の腕を開く。だけど私の引っ掛かった部分はそこではない。
「仲間じゃないんですか!?」
「そうだよ?アイツらとは唯の腐れ縁」
銀さんは両手を広げたまま何でもない事の様にそう言った。じゃあ何で私や総悟と斬り合ったのか。
「じゃあ何故あの時…」
「ホラホラ〜早く斬らないと銀さんの気が変わっちゃうよ〜?いいのかねェ?」
「…。」
…何でこの人ちょっと楽しそうなの?
私は短刀を鞘に戻して懐に仕舞い入れた。遮られた言葉をもう一度言うのも、この人を斬るのもアホらしく感じたから。
「あれ?いいの?」
銀さんはようやく両手を下ろして不思議そうに首を傾げる。
「罪人でも何でも無い一庶民を理由無く斬るほど私達は落ちぶれてはいませんから」
私がそう言うと銀さんは「そ、ならいーけど」と興味無さそうに呟いた。
「槿花ちゃん勿体無い事したね〜。折角の斬るチャンスを捨てちゃってさ」
「だから私にも貴方を斬る理由が無くなったんです!!」
銀さんは残念そうに苦笑する。私はそんな彼を見てまた腹立たしく思った。
「…本当にそうだといいけどな」
「?」
「つーかさ、いつまでびしょ濡れの着物着てるつもりなんだ?いい加減気持ち悪ィだろ」
「あっ…!」
私の着物を指差す銀さんの言葉で私は我に返った。
完全に忘れてた。
「数分だけなら外に出ててやるからとっとと着替えるこったな」
「わっ!?」
ポイッと無造作に投げられたのは薄緑の綺麗な着物だった。
薄緑の生地に淡いピンク色の桜が散りばめられた上質な着物。
「あの…これ」
「べっつにィ〜?その辺にあったから適当に投げただけだしィ〜似合うかな〜とか思って無ェしィ〜」
あっそ。
ほんの少しだけこの人がヒーロー扱いされているのが分かった気がする。
私は銀さんを廊下に追い出して一人着物に着替え始めた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - すももさん» ありがとうございます!!あの2人良いですよね、同志が見つかって私も嬉しいです!!! (2017年7月24日 0時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - とても面白かったです〜!私ものぶさぶ大好きです(≧∇≦)かわいいですよね!! あんまり二人の推し、居ないんですよね〜(つД`)ノ (2017年7月22日 17時) (レス) id: f8834efd1a (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» そうでしたね(^^)気をつけます (2016年4月3日 12時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)
lying doll(プロフ) - 銀時豆さん» 気を付けてお帰り下さい〜お家に帰るまでが旅行ですよ( ˘ω˘ ) (2016年4月3日 10時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» なんとか今の所持ちこたえてますσ^_^;明日あたり帰るかなという感じです(ー ー;) (2016年4月2日 21時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lying doll | 作成日時:2016年3月20日 22時