弐拾玖 ページ34
目の前の男は起き上がり何故か悲しそうに笑っていた。
「あの時傷付けた額…まだ治って無ェのな」
銀さんの手が額の傷へと伸びる。
バシッ
私はその手を払って彼をキッと睨み付ける。銀さんは叩かれた手を驚愕の表情で見つめていた。
「いつから…いつから気付いてたんですか?」
私は起き上がって少し乱れた着物を直しながらそう聞く。銀さんは「あー…」と頭を掻いた。
「揚屋でオメーを見た時は化粧してたしすぐには気付かなかったけど…飯食ってる時に何となく前にも会った事あんな〜って思ったんだよ」
お化粧…そんなに変わって見えるんだ。
私はいつも必要も無いから全くのすっぴん状態で、この人と初めて会った時もそうだった。
良く気が付いたな〜…
そう思いつつ私は彼の脇差に目を向けた。そこにはあの時私の額に傷を入れた木刀がある。
木刀の持ち主は立ち上がって眠たそうに目をこすっていた。
「…何してるんですか」
「ん〜?別に何もしてねーよ」
ダンッ
私は隠し持っていた短刀を取り出して彼を壁に追い詰めた。
刀が壁に刺さり彼の銀髪が数束ハラリと舞い落ちる。
「へェ…こんなモン持ってたんだ。おっかねェお嬢ちゃんだなァ」
彼は言葉とは裏腹に全く驚いた様子は見せなかった。彼は私を見て笑っていた。
「何故ですか?」
「何が」
「私を殺さないんですか?」
こんな状況になっても刀を抜こうとしない、私の正体が分かっていたのに私を刺さない。
私を舐めているのか?
「なに、殺して欲しいの?」
「チャンスは幾らでもあったはずです。さっきも…今も」
どうして、どうして…!!
どうしてそんな悲しそうな目で私を見るんだ。
まるで同情でもするかの様なその目がひどく私を苛立たせる。
「殺す理由が無ェからだよ」
銀さんは壁に背を付けたまま首をゴキッと鳴らす。肩を掴んでぐるりと一周回すと「はぁ」と息を吐いた。
「それに、せっかく高杉から君を助けたのに殺しちゃあ意味が無ェしな」
「助ける…?」
"俺ァこの姉ちゃんが気に入ったよ"
さっきの揚屋での出来事。あれはやはり助けるつもりで彼がやった事だったのか。
「見ず知らずの人間を貴方は唯の善意だけで助けたのですか?とんだお人好しですね」
銀さんは「違ェねーや」と軽く笑ってみせると「でも」と言葉を続けた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - すももさん» ありがとうございます!!あの2人良いですよね、同志が見つかって私も嬉しいです!!! (2017年7月24日 0時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - とても面白かったです〜!私ものぶさぶ大好きです(≧∇≦)かわいいですよね!! あんまり二人の推し、居ないんですよね〜(つД`)ノ (2017年7月22日 17時) (レス) id: f8834efd1a (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» そうでしたね(^^)気をつけます (2016年4月3日 12時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)
lying doll(プロフ) - 銀時豆さん» 気を付けてお帰り下さい〜お家に帰るまでが旅行ですよ( ˘ω˘ ) (2016年4月3日 10時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» なんとか今の所持ちこたえてますσ^_^;明日あたり帰るかなという感じです(ー ー;) (2016年4月2日 21時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lying doll | 作成日時:2016年3月20日 22時