検索窓
今日:12 hit、昨日:13 hit、合計:72,063 hit

弐拾玖 ページ34

目の前の男は起き上がり何故か悲しそうに笑っていた。

「あの時傷付けた額…まだ治って無ェのな」

銀さんの手が額の傷へと伸びる。

バシッ

私はその手を払って彼をキッと睨み付ける。銀さんは叩かれた手を驚愕の表情で見つめていた。

「いつから…いつから気付いてたんですか?」

私は起き上がって少し乱れた着物を直しながらそう聞く。銀さんは「あー…」と頭を掻いた。

「揚屋でオメーを見た時は化粧してたしすぐには気付かなかったけど…飯食ってる時に何となく前にも会った事あんな〜って思ったんだよ」

お化粧…そんなに変わって見えるんだ。

私はいつも必要も無いから全くのすっぴん状態で、この人と初めて会った時もそうだった。

良く気が付いたな〜…

そう思いつつ私は彼の脇差に目を向けた。そこにはあの時私の額に傷を入れた木刀がある。

木刀の持ち主は立ち上がって眠たそうに目をこすっていた。

「…何してるんですか」
「ん〜?別に何もしてねーよ」

ダンッ

私は隠し持っていた短刀を取り出して彼を壁に追い詰めた。

刀が壁に刺さり彼の銀髪が数束ハラリと舞い落ちる。

「へェ…こんなモン持ってたんだ。おっかねェお嬢ちゃんだなァ」

彼は言葉とは裏腹に全く驚いた様子は見せなかった。彼は私を見て笑っていた。

「何故ですか?」
「何が」
「私を殺さないんですか?」

こんな状況になっても刀を抜こうとしない、私の正体が分かっていたのに私を刺さない。

私を舐めているのか?

「なに、殺して欲しいの?」
「チャンスは幾らでもあったはずです。さっきも…今も」

どうして、どうして…!!

どうしてそんな悲しそうな目で私を見るんだ。

まるで同情でもするかの様なその目がひどく私を苛立たせる。

「殺す理由が無ェからだよ」

銀さんは壁に背を付けたまま首をゴキッと鳴らす。肩を掴んでぐるりと一周回すと「はぁ」と息を吐いた。

「それに、せっかく高杉から君を助けたのに殺しちゃあ意味が無ェしな」
「助ける…?」

"俺ァこの姉ちゃんが気に入ったよ"

さっきの揚屋での出来事。あれはやはり助けるつもりで彼がやった事だったのか。

「見ず知らずの人間を貴方は唯の善意だけで助けたのですか?とんだお人好しですね」

銀さんは「違ェねーや」と軽く笑ってみせると「でも」と言葉を続けた。

参拾→←弐拾捌



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
77人がお気に入り
設定タグ:坂田銀時 , 土方十四郎 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

月ヶ瀬ましろ(プロフ) - すももさん» ありがとうございます!!あの2人良いですよね、同志が見つかって私も嬉しいです!!! (2017年7月24日 0時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - とても面白かったです〜!私ものぶさぶ大好きです(≧∇≦)かわいいですよね!! あんまり二人の推し、居ないんですよね〜(つД`)ノ (2017年7月22日 17時) (レス) id: f8834efd1a (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» そうでしたね(^^)気をつけます (2016年4月3日 12時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)
lying doll(プロフ) - 銀時豆さん» 気を付けてお帰り下さい〜お家に帰るまでが旅行ですよ( ˘ω˘ ) (2016年4月3日 10時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» なんとか今の所持ちこたえてますσ^_^;明日あたり帰るかなという感じです(ー ー;) (2016年4月2日 21時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:lying doll | 作成日時:2016年3月20日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。