弐拾捌 ページ33
「着物もこんだけ種類があると呉服屋みてェだな」
「そうですね」
二階に上がり着物を数着手に取る。隣では銀さんも同じ様に何着か漁っている。
どうしてこうなった。
忙しない私がお吸い物を零したのは自業自得の話だ。
でも何でアンタまで付いて来るんだ。
私は着替えに来たのに、着替えるのに何で同じ部屋にいるんだよ。
「あの…」
私は隣で青い着物を眺める銀さんに控え目に声を掛けた。
「私…着替えたいのですが…」
「ウン、知ってる」
銀さんは私に目を向ける事なく着物を広げたり畳んだりと繰り返す。
えっと、もっとハッキリ言わないと伝わらないのかな?
「あの…銀さんが居ると着替えられないのですが…」
「何で?」
そこでようやく銀さんは私の方を見た。表情の消え失せた彼の顔と何を考えているのか分からない赤い目が私を射抜く。
何でって…
「オメーさ、何か勘違いしてねェか?」
「勘…違い?」
銀さんはすっと目を細めると私の手首をグッと掴んだ。
「!」
手首に彼の力が込もる。
振りほどく事の出来ない熱が私の手首に走る。
「
銀さんは言葉を止めると私に顔を近付けた。
私の顔に掛かった銀髪と彼の顔が真近にある恥ずかしさに私は思わず目をぎゅっと閉じる。
「まァ初めてだもんな」
「!」
耳元に掛かった息は思ってたよりも甘くて熱くて…
怖い…!
どうしようもなく逃げ出したくなった。がっちりと固定された右手は熱くて、そこだけ燃えている様な錯覚を起こす。
「ンなガチガチにならんでも俺に任せときゃいーからよ」
怖い、怖い怖い怖い。
このままこの男に抱かれてしまうのか、敵なのに…好きな相手でもないのに。
本物の遊女達は毎日こんな事をやってのけるのか。
私は初めてこの潜入調査が怖くなった。
銀さんは私を布団の上に横たわらせ私の上に覆いかぶさると私の頭をゆっくりと撫でた。
彼の手付きはどこまでも優しいのに私は恐怖のあまり泣きたくなった。きつく瞑った目の端からは涙が零れ落ちる。
銀さんは頭を撫でる手を移動させて前髪を軽く払った。
「やっぱり、な」
呟く様に放たれた言葉に私は思わず目を見開いていた。
この人…まさか!!
「やっぱオメー、この前のお嬢ちゃんだったんだな」
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - すももさん» ありがとうございます!!あの2人良いですよね、同志が見つかって私も嬉しいです!!! (2017年7月24日 0時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - とても面白かったです〜!私ものぶさぶ大好きです(≧∇≦)かわいいですよね!! あんまり二人の推し、居ないんですよね〜(つД`)ノ (2017年7月22日 17時) (レス) id: f8834efd1a (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» そうでしたね(^^)気をつけます (2016年4月3日 12時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)
lying doll(プロフ) - 銀時豆さん» 気を付けてお帰り下さい〜お家に帰るまでが旅行ですよ( ˘ω˘ ) (2016年4月3日 10時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» なんとか今の所持ちこたえてますσ^_^;明日あたり帰るかなという感じです(ー ー;) (2016年4月2日 21時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lying doll | 作成日時:2016年3月20日 22時