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拾参 ページ16

そしてもう一つ。

"あの人の事、宜しくね"

貴女との約束も。

「私は絶対に違えたりはしません」

土方さんは黙って私の話を聞いていた。(しばら)くして私の肩から頭を退けると、

「…。」

無言のまま私の事を横から抱き締めた。

「土方さん?」

土方さんは私の呼び掛けに何も言わず私に回す腕に力を込める。

「…ごめんな」

ポツリと謝罪の言葉が紡がれる。彼が何に対して謝っているのか分かる様で分からない。

「俺はお前を自由にはしてやれない、お前を幸せにする事も多分出来ない。それなのにこんな風にお前を縛り付けて…本当にどう詫びたらいいのか分からねェ」
「…。」

彼のこんなに弱々しい言葉を聞いた事は無かった。いつも皆の先頭に立ち導く彼がこんなに弱音を言う事は珍しかった。

「私はいいんです、私の幸せは真選組(ここ)にありますから。ここに居る限り貴方の隣に居られる、それで良いんです」

言葉は無力だと思う。
どれだけ綺麗な言葉を並べても本当の気持ちなんて少しも伝わらない。

それでも言葉にしなければ私達は互いを信じる事が出来ない。

まるで互いを繋ぐ一つの鎖の様に…

決して切れない私と貴方を繋ぐ一つの約束。


♦♢♦

____10年前。

私はただ目の前の光景を他人事の様に呆然と見つめていた。燃え盛る炎はかつて笑顔の溢れた一つの家庭を包み熱く燃えている。

あんなに大好きだった場所なのに、いとも簡単に崩れ去る姿を見て私はただ呆然と見ていた。

声を上げる事も出来ない。
さっきまであの中に居たのだ、恐らく大量の煙を吸ってしまっているから。

「君…!大丈夫か!?」

私を助けに来てくれた人、その男性の名前が近藤さんだと後に私は教えられる。

心配そうに私の肩に手を掛ける近藤さんに私は一瞥(いちべつ)して私は真っ直ぐに燃える家を指差す。

「…君のご両親はもう助けられない。すまない…」
「…。」

キュゥと喉が鳴る。何かが喉に溶けていく様に溶けた何かが上に上がってくる様に。

「…っ……うっ…」

ボロボロと涙が(こぼ)れる。(あふ)れて止まらない雫は地面をゆっくりとぬらしていく。

「君!!」

私は燃え盛る家に向かって駆け出していた。

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設定タグ:坂田銀時 , 土方十四郎 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - すももさん» ありがとうございます!!あの2人良いですよね、同志が見つかって私も嬉しいです!!! (2017年7月24日 0時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
すもも - とても面白かったです〜!私ものぶさぶ大好きです(≧∇≦)かわいいですよね!! あんまり二人の推し、居ないんですよね〜(つД`)ノ (2017年7月22日 17時) (レス) id: f8834efd1a (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» そうでしたね(^^)気をつけます (2016年4月3日 12時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)
lying doll(プロフ) - 銀時豆さん» 気を付けてお帰り下さい〜お家に帰るまでが旅行ですよ( ˘ω˘ ) (2016年4月3日 10時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
銀時豆(プロフ) - lying dollさん» なんとか今の所持ちこたえてますσ^_^;明日あたり帰るかなという感じです(ー ー;) (2016年4月2日 21時) (レス) id: a770d2a664 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:lying doll | 作成日時:2016年3月20日 22時

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