前世で鬼殺隊の一隊士だった私は今世でも一生徒として過ごしたい

狸タヌキたぬき ページ22

｢お前、なんでやり返さなかったんだよ｣

不機嫌そうな顔で訊かれた。


俯いて答えた。

｢ちょっとは抵抗したんだけど、私弱っちいから｣

敵わなかったよ、と続けた声が震えてしまった。


今はすごく役立たずなんだなあ、と自覚すると悲しくなってくる。


｢……腹、蹴られたのか｣

嘴平はしゃがんで、私のお腹をシャツの上から撫でた。


は？？

なんで分かったんだ、と疑問に思ったが、シャツに土がついていた。


なるほど！

……いや嘴平が冷静すぎて怖い。

そんな所に気づくような奴じゃなかったと思うんだけどな。



｢うん。あの、助けてくれてありがとう｣

嘴平の言葉に頷いてから、お礼を言った。

嘴平が来なかったら私はもっと酷い目にあっていただろう。


すると嘴平はフンっと鼻を鳴らした。

｢お前は俺の子分だからな｣

｢親分が子分を助けるのは当然の事だ｣


……私って嘴平の子分だったんだー。初耳ーー。



｢でもお前なんで助けを｣

｢伊之助どこだーーー！！！！｣


嘴平は私に何か言ったが、別の大声に隠れてよく聞こえなかった。


｢今行くから待ってろ権八郎！！！！！｣

大声で嘴平が叫んだ。

これが嘴平だよね、と思ったが鼓膜破れそうなのでやっぱりもうちょっと抑えて欲しい。


｢タヌキ！！！｣

｢……はい？｣

急に動物の名前が聞こえた。

けどいつもの言い間違いで私の事を呼んだんだよね？？？？？？

多分。



｢次こういう事があったら迷わず俺を呼べ！！｣

｢いいな！！！｣


私の返事は聞かず、走ってどこかへ行ってしまった。

台風かよ。




私も立ち上がろうとしたけど、上手く力が入らなかった。


しまった。

これじゃ立ち上がれないし、家に帰れない。


うーん。鞄探そうかな！！

連絡して助けてもらう……今日家に誰が居たっけ？？



……駄目だ、愛犬のコロしかいない。

詰んでるじゃねえか！！！！！



諦めて今日は野宿しよう。そうしよう。

ヤケになって地面に寝転んだ。


空がオレンジがかって綺麗だ。

気分が最悪な時に限って空って綺麗だよねー。


あー、なんかもう眠いし。寝よう。寝て忘れる。


｢おやすみ……｣


目を閉じたらすぐに意識が深く沈んだ。






△

｢あ！お姉さん……死んでる？｣


｢いや、寝てるだけだ｣


｢本当だ。良かったあ…｣

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