前世で鬼殺隊の一隊士だった私は今世でも一生徒として過ごしたい

擦過傷 ページ15

｢ぅぐっ！！｣

顔面からコンクリートの地面に突っ込んだ。


恥ずかしい！！ダッサい！！

顔から火が出そうだったが、とりあえずぴょんと起き上がって一歩踏み出した。


｢待て少女！！｣

聞き覚えのありすぎる声が聞こえた。


嫌ですう！！

無視して走り出そうとすると、悲痛な声が耳に刺さった。


｢大丈夫ですか！？｣

立ち止まってしまった。

千寿郎君はずるい……。不可抗力じゃん……。




△


｢どうしてあんなスピードで走ったんだ？｣

｢雨の中で全力疾走するのが夢だったんです｣


｢なぜそれが夢だったんだ？｣

｢……青春じゃないですか！｣

｢分からん！｣


そんなばっさり切らなくても……。

あの後、問答無用で車に乗せられ煉獄家に連れてこられた。

家の表札が煉獄だった。震えた。


今は傷の手当をして貰っている……煉獄杏寿郎に。

私の怪我した場所が顔面だから、真正面から見つめられながら手当されている。


綺麗な目だなあ、とか現実逃避した。



｢痛かっただろう｣

低い声でそう言われた。

若干咎められている。


｢そんなに痛くないですよ｣

出来る限りの朗らかな笑顔で言い放った。

だって本当ですし？？


鬼殺隊士の時はこんな擦過傷程度でピーピー泣いてたらやってけなかったですからねー。

痛いのは慣れっこですううううううう。


｢それでも次からは気をつけるように｣

ガチトーンではっきり怒られた。


｢……はい｣

こうして人に迷惑をかけているし、浅はかな事をしてしまったのかもしれない。

静かに反省した。


｢よし！もう夜遅いから送ろう！｣

煉獄杏寿郎は突然立ち上がって宣言した。


もちろん嫌なので間髪入れずに断る。

｢あ、一人で帰れます｣

｢俺は煉獄杏寿郎だ！少女の名は何だ！！｣


私の言葉を最後まで聞かず、勝手に私を抱き上げて歩き出した。


……うん。いや、貴方は人の話聞きませんよね。

知ってました。知ってたんですけど傷つくのでやめてください。


｢環Aです｣

｢A！！いい名前だな！｣

｢ありがとうございます｣

大人しく質問の内容に答えた。


というか顔近いな。

というかこの態勢なんなんだ？

あなたは冨岡ですか？冨岡なんですか？？

ゾンビ→←お義兄さん

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す