後悔なんてしないように ページ32
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パチリ。目を開けて、視界に光が入ってくる。
Aは体を少し動かし、少しだけ走る痛みに眉を顰めた。
「A、大丈夫?」
『…しょーこさん、?だいじょぶです全然』
「んーん、絶対だいじょばないから。下手に動くとまずいことになるよ」
『…』
そう背中を向けた硝子に目線を向けた後、Aは天井に目を向ける。
一息ついて、硝子に声をかけた。
『猪野さんは…?』
「大丈夫…とは言えないけど死んでない」
『恵と悠仁は?』
「Aは恵が運んできたよ、悠仁は来てない」
『…そっか』
少しの沈黙が二人の間に広がる。
そしてそれを打ち破ったのは、Aによる呪文だった。
『
「大事をとる、って知ってる?」
その呪文を唱えると、みるみる傷は癒えていく。
『ねえ、お願い硝子さん…ハナカッカも持って来たんです、私!あの傷治せるやつ』
「だから?」
『…だから?だから〜、早く私も外に出させてくださいよ、今すごいピンチなんですよ?』
呪文で、硝子に見せつけるように包帯を巻くA。
硝子はそれを見て、ため息をつく。
「何のために行くの?」
『ごじょせんを助けるため、あと…私が後悔しないため』
「後悔、」
『猪野さんが動けない分、私が働かなきゃ』
彼女がそう呟く口調には強い後悔が混ざっていて。
少し俯くAの姿を見て、硝子の心は動かされる。
『…何してんですか、え?』
そして彼女は、Aの腹部を押した。
『え、ちょ、え?』
「…ほんとに痛くないみたいね、いいよ行っても」
『ほんとに?』
「絶対無理はしないこと。痛くなったら戻っておいで」
そう硝子の許可が降り、寝かされていた所から降りるA。
少しだけ伸びをして、首をくるりと回す。
硝子は、脱がされていた洋服を全て着て杖を持ち直して外へと出ていくAを見送る。
「…絶対、死ぬなよ」
『…、猪野さん、頼みましたよ』
「A、!』
箒を肥大化させ、それにまたがって飛んでいくA。
彼女の名前を読んでも振り返ることなく。
一抹の不安を抱えながら、飛んでいくAを硝子は見送るのみだった。
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なんなん(プロフ) - 杏莉さん» ほんとうですか………めちゃめちゃめちゃめちゃ嬉しいですありがとうございます泣!!!! (2021年3月12日 21時) (レス) id: c1887ad742 (このIDを非表示/違反報告)
杏莉 - ふわああああ! 面白いですっ! 更新楽しみにしていますね! (2021年3月12日 18時) (レス) id: 8bbf1cd05e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なんなん | 作成日時:2021年3月4日 16時