銀魂 【不死蝶の舞姫】3

第百ニ十訓 ページ22

銀時side






「…どうしょ、銀時…わた、し…

化け物に、なっちゃ…った」


その叫びに似た呟きを聞いて気づいた時には手加減なしに小さな体を引き剥がしていた。吸い込まれそうな瞳から止まらない雫が頬を伝い、地面に落ちる。俺は背中が濡れる感覚でもっと早くから泣いてるって事は分かってた。けど、いざ顔を見ればその瞳は光がなく、悲しみ、戸惑い、恐怖に揺れていて。




銀時「……ッ」




なんて声をかけてやればいいか、言葉が喉を通らない。

化け物なんかじゃねぇとか
それでもお前は何も変わらないとか…そんな安っぽい言葉を並べる気にもなれなかった。

"「自分を大切にしてくれ」"
俺が吐いたその言葉が…コイツに重たくのしかかって苦しめてる。

"『化け物の私をどう大切にしたらいいの！？』"
そんなAの悲痛な叫びが聞こえた気がした。でもよ、死なないからって




　
銀時「ちゃんと、痛ぇだろ」

「…っ」

銀時「痛かったよな…A」





Aの瞳が徐々に大きさを増す。
痛みまで感じない訳じゃねェ。ちゃん痛かったり苦しかったり…そんなのお前が辛いだけだろ。

俺はAの着物の乾いて黒くなった血(シミ)を撫でる。




銀時「だから俺は…オマエに自分を大切にしてもらいたい」




コレは俺のエゴだ。でももし




銀時「Aが自分を大切にする事を拒絶するってーなら…俺はそんなお前を死んでも護る」

「な…で…っ 私の話し、聞いてなかった、の？」

銀時「いや、聞いてたぜ」

「それなら、なんでっ！？私、死なないんだよ！？」

銀時「死なねぇとか…関係ねーよ。俺がだた嫌なんだ。オマエが一度でも死ぬのが…嫌なんだよ」




理解できないと言いたげに瞳を揺らすAに問いかけるように、静かな声で語りかける。




銀時「お前が死ぬぐらいなら俺が死ぬ。俺が生きてるうちは絶対に死なせねェ。…Aを護る」

「………ッ」



キラキラと揺れる瞳が綺麗だと、思った。
そっと後頭部に手を当て、引き寄せる。こつん…、と俺の額とAの額が合わさり目を逸らさず、真っ直ぐとAの目を見る。




銀時「心配ねーよ。俺ァ そんな簡単にくたばんねェ…腰ひんまがったジジイになっても、しっかり木刀(コイツ)振り回してオマエを護ってやる」

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