感情は実るもの ページ39
.
｢せめて実がなってる所は避けて欲しいよね｣
｢これでもちゃんと避けてるつもりやねんで｣
｢ん？｣
｢いや、何も無い｣
彼はわざとらしく口笛を吹いているが誤魔化しきれていない。寧ろこれで誤魔化せると思ったのだろうか。
｢ま、終わった事に愚痴はもう言わないよ。本当の用はこっち｣
彼、ひとらんらんは手近にある食物…紫色の細長い物体を土から引っこ抜き、土を払うとシャオロンに手渡した。
少なくともAには全く見覚えの無い食物。
そもそも食物か植物かさえ分からない。
『これは…？』
｢さつまいもって言ってね。秋に取れるんだけど、このままだと食べれないから、洗って焼いたりして食べるととても美味しいよ。…それと、遅くなったけど歓迎の印にね｣
前に所属していたリスタールの軍。
皆、どこか冷たかった。挨拶こそしたが、歓迎の印など以ての外。顔も知らない上層部の人間も多数居た。
自分にしか興味の無い、良く言えば業務的。悪く言えば協調性の無い者ばかりだったのだ。
｢ほくほくでめっちゃ美味いで。毎年焼き芋大会裏庭でやってるから、一緒に行こうぜ！｣
｢俺が主催でやってるから、その時は無礼講だよ。一般兵も参加するから、賑やかになると思う｣
ぽんぽん、とシャオロンがAの頭を撫でる。
同年代位の男性から頭を撫でて貰える、慈愛を向けて貰えるのは弟以来だった。
己の欲望の為に優しくしてくる者とは違う。
何の見返りも求めない優しさに思わずAは涙が溢れそうになるが、悟られない様ににこり微笑んだ。
──信用し過ぎるのも駄目ね。でも、少しだけなら…
『ありがとうございます。ええと…』
｢改めて言うわ。この軍で…いや、この国で超人気者のシャオロン様や！前衛部隊に所属しとる。これから宜しくな！｣
｢きちんと自己紹介してなかったね。俺はひとらんらん。長いからひとらんで良いよ。主にオスマンの護衛と食糧管理を任されてる｣
Aは差し出された手を順々に握り、握手を交わした。
鍛え抜かれた、剣だこの出来た分厚い手。
凡そこの歳の青年の手では無かった。
『私はAと申します。偵察、諜報を主としておりまして。不束者ですが、どうぞ宜しくお願いします！』
穏やかな風の吹く、秋の頃の一場面。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 900人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おつ2(014785wmwi) - 最高だからハッピー○ーンの粉を決めようぜ☆ (2020年7月31日 18時) (
レス) id: b32bfe3549 (このIDを非表示/違反報告)
べす - 朝霧さん» 良い所で焦らすのが趣味ですので()まだまだ物語は続きます！是非またご感想を楽しみにしております！ (2020年7月18日 17時) (レス) id: b38f87aa2d (このIDを非表示/違反報告)
べす - サブ垢での返信御容赦を。思わず笑っちゃいましたｗｗｗ再会してからが本番ですので！ (2020年7月18日 17時) (レス) id: b38f87aa2d (このIDを非表示/違反報告)
べす - 椿さん» うへへへとにやけてしまいそうな内容にするつもりですので、今後とも宜しくお願いします！ (2020年7月18日 17時) (レス) id: b38f87aa2d (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 - いいところで、あぁ、うぁ、下の人と同じですまる (2020年7月17日 19時) (レス) id: dd19b1c917 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ベス | 作成日時：2020年7月11日 9時
