分かりきった勝負 ページ17
.
｢お前達にやる物は何も無い｣
｢ただ差し出せと言っている訳では御座いません。…ふむ、ではA殿が我々国へ渡る暁には貴国と同盟を結びましょう。貴国の領土へは一切の危害は金輪際加えません｣
あまりに横暴な発言だった。
『お言葉ですが。私は貴国へ渡る気は毛頭御座いません。…どうしてもと仰るのならば、それ以上の条件を付けさせて頂きます』
一歩間違えれば不敬罪と首を落とされても文句は言えないセリフ。だがAは抵抗した。今すぐにでも国を出たかったのだが…国を捨てる事が出来ない理由が先程出来てしまったのだ。
無くしてしまったかけがえのない弟からの贈り物。あの紫の髪飾りを見付けるまでは退けない。そして…親しくなった仲間。日は浅いが仲良くなった後輩。兄の様に慕った友人。薄情な真似はAには到底出来なかった。
｢勝手な事を申すな。お前の一存で決めて良い事ではないのだぞ｣
｢私はA殿に聞いている｣
グルッペンがぴしゃりと言い放った。有無を言わさない気迫。その様子を尻目にオスマンが口撃を続ける。
｢ええ、何なりと｣
『私の…友人、ぴくととオットーも貴国へ渡航させて下さいませ。この条件を守って下されば、後は私の事は煮るなり焼くなりお好きに』
二人の名を聞いた時、オスマンの目がほんの少しだけ見開いた気がするがすぐに元の胡散臭い笑みを貼り付け彼は答えた。
｢ぴくと殿は貴国の情報通信部隊長でしたよね？了解しました。貴女方に悪い様には致しません…可憐な紫の華を傷付ける訳にはいきませんので｣
『…！ありがとう御座います。で、では今すぐにでも発ちますので』
───紫の華？まさか…そんな訳は
彼女は紫の物は何一つ身に纏っていない。敢えて言うならば瞳の色だが…思い出すのはあの群青の彼。心当たりがあり過ぎてしまった。紫の華の居所はまさか…あの我々国。
そして友人共々この国を去れるならばと、後々の展開までは頭が回っていなかったのだ。
｢何だと…！？A、どういうつもりだ｣
般若の形相でAを睨み付ける国王にも彼女は眼中に入っていなかった。
『今までお世話になりました。どうかお身体を大切に、リスタール王国の繁栄を祈っております』
深々と頭を下げ、来賓室を後にした。
残されたのは途方に暮れた国王と、満足そうに、そしてどこか不敵な笑みを称えた──同盟国の総統と外交官が三人。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 900人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おつ2(014785wmwi) - 最高だからハッピー○ーンの粉を決めようぜ☆ (2020年7月31日 18時) (
レス) id: b32bfe3549 (このIDを非表示/違反報告)
べす - 朝霧さん» 良い所で焦らすのが趣味ですので()まだまだ物語は続きます！是非またご感想を楽しみにしております！ (2020年7月18日 17時) (レス) id: b38f87aa2d (このIDを非表示/違反報告)
べす - サブ垢での返信御容赦を。思わず笑っちゃいましたｗｗｗ再会してからが本番ですので！ (2020年7月18日 17時) (レス) id: b38f87aa2d (このIDを非表示/違反報告)
べす - 椿さん» うへへへとにやけてしまいそうな内容にするつもりですので、今後とも宜しくお願いします！ (2020年7月18日 17時) (レス) id: b38f87aa2d (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 - いいところで、あぁ、うぁ、下の人と同じですまる (2020年7月17日 19時) (レス) id: dd19b1c917 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ベス | 作成日時：2020年7月11日 9時
