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バケモノ ページ1


僕には不思議な力があった。


普通の人間なら持っていない能力。


僕が素手で触った者の力を奪うことができ、自分の力へと置き換えることが出来る。


物心ついた時にはもう僕の手には手袋と手錠がつけられていた。



それは人を殺す命令が出た時のみ、外された。



ずっと檻の中のような生活。


僕は何も疑問を持たなかった。



僕が出る時にボスに必ず言われることがある。



『命令は絶対。弱者は死んで強者が勝つ。

君は強者だ。君は勝つがターゲットである弱者は死ぬ。』



この生活、世界が当たり前で、他の生きる選択肢があることすら知らなかった。



だがある日僕が殺そうとした人が


『死にたくない』


と、言ったのが聞こえた。


僕には理解出来なかった。


人を殺すことは当たり前。

強者が勝つのは当たり前。

弱者が負け殺されることも当たり前。


勿論、これによって誰かが死ぬのは当たり前。


命令以外のことはしない。


何故この人は『死にたくない』などと言ったのだろう。


弱者が死ぬのは当たり前なのに?この人も命令されて殺されにきているのではないのか?


と疑問に思いながら僕は容赦なくその人を殺した。


でも、それと同時にある新しい疑問が湧いた。



死とは何か。人を殺すとはどういうことか、と。



命令だから?ならばボスは?ボスは僕のことを強者と言うが、ボスは強者なのか弱者なのかどっちなのだ?


命令が絶対で動いているのならばボスは誰に命令されて動いているのだ?


そしてそのボスに命令している人は誰に命令されて動いているのだ?



考えれば考えるほど永遠のループにはまる。こんなことを



ずっと考えていた。



ある日僕の力が暴走した。


僕が目が覚めたときには周りには誰もいなかった。ふと下を見てみると地面が真っ赤に染まっていた。


自分の左手にはボスの首が。右手にはべっとりと赤い液が付いていた。



_______なんだ…。ボスも弱者だったのか…。



僕はそれをぼーっと見ていた。


『バケモノ…め……。死ね……。』


まだ息があるのがいたらしい。何処からか聞こえてきた。


バケモノ…か。


強者が弱者を殺すのが当たり前なのに?


でも、自分の意思ではないとは言え初めて命令に逆らった。



これから僕はどうすればいい?



今まで命令にだけ従っていたから命令がなければ動けない。


その時、僕の質問に答えられる者は誰もいなかった。



みんな僕が殺してしまったから。


権利→



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作品ジャンル:泣ける話, オリジナル作品
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作者名:魔水 | 作成日時:2020年6月6日 18時

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