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ずっと楽しみにしていた横浜旅行は滞りなくその日程を進め、二日目の夜になっていた。明日起きて横浜の街を少し観光したらその日のうちには帰らなければならない。大好きな同僚や先輩との楽しい時間も、もうすぐで終わり。その次の日から来るであろう何時もの労働のことを思えば、自然と溜息が盛れた。


けど、楽しかった、なあ。

海でめいっぱい泳いだ。ビーチバレーもした。観音坂先輩がサーブ狙われてて、動揺する姿がかわいかったなあ。昼は海の家で食べた。焼きそばを頼んだわたしの横で、観音坂先輩はかき氷食べてたっけ。一口いる?って、ストローを向けてきたのは狡いと思った。
今日はみなとみらいのコスモパークで一日中遊んだ。小林と木下先輩と、観音坂先輩。主に四人で回って、行けるアトラクションほとんど全部回ったっけ。若い子は元気だね、なんて言う観音坂先輩もまだまだ若いのに。二人ずつで観覧車に乗る時、観音坂先輩の手を取ったのはわたしだった。拒まれなくて、良かった。

思い返して浮かぶのは観音坂先輩の顔ばかり。ほんとうに、好きすぎるんだ。自分ではもうどうしようもないくらいに、大好きで。こんな気持ちは、本来だったら消すべきなのだろうけど。今はまだ、無理かもしれない。
温泉を上がり浴衣に袖を通す。売店で買ったフルーツ牛乳を飲み干し瓶を籠に置く。少し、湯冷めしてしまった。外の空気でも吸いに行こうか。そう思い立ち、外に続くドアがある廊下を歩く。ふと、その突き当りに人の姿を見つけた。備え付けの椅子に座り、大きな窓から月を眺めるその人は、観音坂先輩だ。





「 ……あ、日下部さん 」




観音坂先輩は横目でわたしに気付くと、すぐさまこっちを見て口角を緩めた。ふにゃふにゃとして、気の抜けた笑顔だ。
お隣、いいですか。そう声をかける。観音坂先輩はこくりと頷いて浴衣の裾を少し揺らした。昨日も思ったけれど、観音坂先輩は和服が良く似合う。温泉の指定浴衣なんてそうそうお洒落なものでは無いのに、どうしてかすごく輝いて見える。観音坂先輩の少し濡れた前髪を見れば、なんとなく心がふわふわとした。

観音坂先輩は、この状況をどう思っているのだろうか。観音坂先輩は、隣に座りたいと言ったわたしのことをどう思っているのだろうか。そこには少なからず下心なるものが含まれているわけで、観音坂先輩もきっとそれに気付いているわけで。
だから、期待してしまうのに。

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葡萄爽希(プロフ) - どっぽちん…君は最高にかわいいよ!!!! (2022年10月4日 21時) (レス) @page45 id: d897661d77 (このIDを非表示/違反報告)
y - オリキャラ出すなら注意書きしてほしかった… (2022年5月7日 8時) (レス) @page15 id: 103c948e3e (このIDを非表示/違反報告)
ヒプマイ好き推し決められん - どっぽちん…お前可愛いかよ…(((((殴はっ!!!(`°A°´)し…死ぬところだった…ヤバイヤバイ((汗 良い作品ありがとうございます!!!応援します!!!頑張ってください!!!!!!! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 9f95d8689d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきごん - ステキな作品をありがとうございます…!!どぽちん可愛い…!! (2019年10月2日 1時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
ましろ.(プロフ) - れをさん» コメントありがとうございます。最後までお読みいただき、また独歩くんと夢主ちゃんを見守っていただき本当に有難いです。完結できたのも読者の皆様のおかげだと大変嬉しく思っております 。○ 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。 (2018年11月25日 8時) (レス) id: c3377e09aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ. | 作成日時:2018年10月12日 17時

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