検索窓
今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:227,349 hit

ページ31

.





今日は楽しいお話をありがとうございます。

静かな声でそう言った入間さんは、わたしとりを交互に見ると席を立った。勘定の板を手に取って、そのままレジの方へ歩いていく。何をしようとしているか、なんて考えなくても分かる。慌てて引き止めると、入間さんはこういう時ぐらい男にカッコつけさせるものですよ、と優しい声で咎めた。


店を出て、入間さんと向き合う。今日は突然の出会いから始まり、けれどとても濃密な時間を過ごせた気がする。入間さんとは初対面で、お互いの人柄すらも知らなくて。それでも観音坂先輩という共通の話題があって、わたしの恋心まで打ち明けてしまった。そうしてしまったのは、入間さんの雰囲気が緩く語りかけてくるからだろうか。




「 では、私はこの辺で。この後知り合いと約束をしていますので 」

「 あ、そうなんですか。今日はありがとうございました 」




是非また今日のようにお話でも。

また会えますか、と聞く前に、入間さんがそう言った。パッと見あげた入間さんの表情は穏やかで、思わず大きく頷いてしまった。
満足そうな笑顔を見せた後、入間さんはもう一度では、と言ってくるりと背を向けた。六花と並んだままその背中を見送って、見えなくなってから小さく溜息を着いた。憂鬱な溜息ではない。

六花と電車に乗り込む。シンジュクに戻って、明日からまた働かなくてはならない。仕事は辛いけれど、観音坂先輩の存在を思えばその思いも少しは晴れるものだ。
そんなことを考えながら電車の中でぼやぼやとしていると、隣に座っていた六花がわたしをちらりと見て、楽しそうに笑いながら口を開いた。




「 そんでAさあ、結局どうするの? 」




それはどういう意味だろうか。相変わらず理解の遅いわたしに呆れた笑みを浮かべる六花は、観音坂先輩のこと、と言った。
確かに今日一日、六花と入間さんと、観音坂先輩のことについて話し合ったけれど。結局的な解決策は見つかっていないし、最善策と思われるものも見つかっていない。


観音坂先輩の、こと。
わたしはどうすればいいのだろう。

もう一度告白をする。あの時のすき、は恋愛感情なのだとハッキリ伝える。それは出来ない。今更とか思われるのも嫌だから。
今まで通りただの部下として接する。それはきっと難しい。わたしは、馬鹿正直なくらいに観音坂先輩のことがすきだから。






もう、諦める。



ひとつの考えが頭に浮かんで、思わず泣きそうになってしまった。

。→←。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (381 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
587人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

葡萄爽希(プロフ) - どっぽちん…君は最高にかわいいよ!!!! (2022年10月4日 21時) (レス) @page45 id: d897661d77 (このIDを非表示/違反報告)
y - オリキャラ出すなら注意書きしてほしかった… (2022年5月7日 8時) (レス) @page15 id: 103c948e3e (このIDを非表示/違反報告)
ヒプマイ好き推し決められん - どっぽちん…お前可愛いかよ…(((((殴はっ!!!(`°A°´)し…死ぬところだった…ヤバイヤバイ((汗 良い作品ありがとうございます!!!応援します!!!頑張ってください!!!!!!! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 9f95d8689d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきごん - ステキな作品をありがとうございます…!!どぽちん可愛い…!! (2019年10月2日 1時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
ましろ.(プロフ) - れをさん» コメントありがとうございます。最後までお読みいただき、また独歩くんと夢主ちゃんを見守っていただき本当に有難いです。完結できたのも読者の皆様のおかげだと大変嬉しく思っております 。○ 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。 (2018年11月25日 8時) (レス) id: c3377e09aa (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ましろ. | 作成日時:2018年10月12日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。