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「 ね、このあとどうせ暇でしょ 」




言い方に問題があるのではないか。そうぼやくより先に、六花は暇だよね、と言い切った。文句を言うのもこの女には無駄なことなのだろうと割り切って、わたしはこくりと頷いた。

カフェを出た六花が提案したのは、ヨコハマに行くことだった。
わたし自身ヨコハマに行くのは初めてだ。観音坂先輩が営業で訪れることもあると言っていたけれど、まさか仕事より先にプライベートで行くことになるとは。少し戸惑いつつも、まだ見た事のない街にちょっとだけ楽しみだったり。するすると人の波をぬっていく六花の背中を追い掛けて、電車に乗る。便利な時代になったものだ、シンジュクからヨコハマまで一時間ほどで行けてしまう。




「 あ、」

「 ん?どうしたの? 」

「 いや、なんでも 」




確か観音坂先輩から聞いた話。それと、テレビから得た情報を思い出した。ヨコハマと言えば、有名なディビジョンがいると。ヨコハマディビジョン代表、『MAD TRIGGER CREW』。メンバー一人一人の容姿やその概要は知らないけれど、観音坂先輩がヨコハマに知り合いがいると言っていたから、良く覚えている。

そんなことをぼやぼや考えていたからか、電車を降りた六花の背中を見失っていた。慌ててホームを出て、六花を探す。少し先の人混みの中に見つけた。思わず手を伸ばそうとして駆け出す、と同時に、鼻の頭に衝撃が加えられた。故意ではないそれは、無意識だからこその痛みがある。我武者羅に六花を追いかけていたせいか、誰かにぶつかってしまったらしい。わたしは顔を上げると、高い位置にあるその顔を見上げた。




「 ご、ごめんなさい!前よく見てなくて……! 」

「 いえ、大丈夫です。コレ、落としましたよ 」




随分整った顔だ。眼鏡のレンズ越しにわたしを見つめる瞳が、太陽の光を反射して輝いている。その美形ぶりに思わず言葉に詰まった。
彼がわたしに差し出したのはポケットに閉まっていた名刺ケースだ。落としたはずみに何枚か散らばっている。それを拾い上げた彼が名刺の一枚に目を通す。すると、彼はわたしを見直し、薄い笑みを浮かべると口を開いた。




「 営業課、ということは観音坂さんのお知り合いですか。ご存知ですよね、シンジュクディビジョンの観音坂独歩 」

「 ……え、!? 」




まさか、こんな所で観音坂先輩の名前が出てくるなんて思わなかった。口が塞がらないわたしを見て、彼はまた綺麗な笑みを浮かべた。

。→←7. 観音坂先輩はずるい。



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葡萄爽希(プロフ) - どっぽちん…君は最高にかわいいよ!!!! (2022年10月4日 21時) (レス) @page45 id: d897661d77 (このIDを非表示/違反報告)
y - オリキャラ出すなら注意書きしてほしかった… (2022年5月7日 8時) (レス) @page15 id: 103c948e3e (このIDを非表示/違反報告)
ヒプマイ好き推し決められん - どっぽちん…お前可愛いかよ…(((((殴はっ!!!(`°A°´)し…死ぬところだった…ヤバイヤバイ((汗 良い作品ありがとうございます!!!応援します!!!頑張ってください!!!!!!! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 9f95d8689d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきごん - ステキな作品をありがとうございます…!!どぽちん可愛い…!! (2019年10月2日 1時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
ましろ.(プロフ) - れをさん» コメントありがとうございます。最後までお読みいただき、また独歩くんと夢主ちゃんを見守っていただき本当に有難いです。完結できたのも読者の皆様のおかげだと大変嬉しく思っております 。○ 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。 (2018年11月25日 8時) (レス) id: c3377e09aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ. | 作成日時:2018年10月12日 17時

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