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「 ……観音坂先輩は、かっこいいです 」
日下部さん、真面目に答えなくていいから。
相変わらず赤い頬を向けて観音坂先輩が言う。でも、どうしてだろう。何を感傷に浸っているのだろう。どうしてこんな気持ちになるのだろう。ああ、そうか。結局あの暑さにやられていたのだ。告白してしまったのだって、そう。きっと夏の暑さと蜃気楼のせいなの。
「 いっつも助けてくれて、笑いかけてくれて。かわいいところもあるし、かっこいいところもある。こんなんじゃ、好きになってもしょうがないじゃないですか 」
口からこぼれる言葉が止まらない。わたしの脳は告白してフラれたからといって、割り切っているのだろうか。恥ずかしいことばかり口走っているはずなのに、不思議とひとつも恥ずかしくなんてない。それは、こぼした言葉に嘘偽りがひとつもないからなのか。
観音坂先輩は紅い肌をもっと赤く染めあげた。もういいから、と言うのが微かに聞こえたけれど、自分でももう止められないのだ。
「 観音坂先輩のいいとこ、いっぱい知ってます。でも、それは多分わたしだけじゃない 」
観音坂先輩のことを見ているのがわたしだけなんて、どうしてそんなこと思ったの。そんなこと、あるわけないじゃない。
観音坂先輩の魅力なんて数え切れないほどあって。わたし以外の人間がそれに気付いてたって何もおかしくない。何も不思議じゃない。わたし以外の誰かが観音坂先輩のことを好きになったって、おかしくない。観音坂先輩のこと好きにならないで、なんて。もうちょっとだけわたしだけが知っていたい、なんて。そんな我儘が通る訳でもないのに。
「 ずるい、独占欲なんです。わたしだけが、観音坂先輩のことを好きでありたいなんて 」
ずるい、ずるいの。こんなわたし、手で口と目と鼻を塞いで欲しいの。もう、息もできないように。そう思うのに、まだ観音坂先輩を手放したくないって思うわたしは、どこまで行っても醜いの。
でも、
「 お願い……わたしを、わたしのことを見てください、観音坂先輩……! 」
ぐるりと世界が回った。
心の奥底にしまっていた本音をこぼしたと同時に、視界がぼやけていく。頭も、何も考えられなくなっていく。身体が浮くような感覚。それと同時に、身体がぐらりと横に傾いた。
目を閉じる前、観音坂先輩と神宮寺先生がわたしの名前を呼んだ気がした。
無駄な期待は、その声に吸い込まれていくようだった。
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葡萄爽希(プロフ) - どっぽちん…君は最高にかわいいよ!!!! (2022年10月4日 21時) (レス) @page45 id: d897661d77 (このIDを非表示/違反報告)
y - オリキャラ出すなら注意書きしてほしかった… (2022年5月7日 8時) (レス) @page15 id: 103c948e3e (このIDを非表示/違反報告)
ヒプマイ好き推し決められん - どっぽちん…お前可愛いかよ…(((((殴はっ!!!(`°A°´)し…死ぬところだった…ヤバイヤバイ((汗 良い作品ありがとうございます!!!応援します!!!頑張ってください!!!!!!! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 9f95d8689d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきごん - ステキな作品をありがとうございます…!!どぽちん可愛い…!! (2019年10月2日 1時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
ましろ.(プロフ) - れをさん» コメントありがとうございます。最後までお読みいただき、また独歩くんと夢主ちゃんを見守っていただき本当に有難いです。完結できたのも読者の皆様のおかげだと大変嬉しく思っております 。○ 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。 (2018年11月25日 8時) (レス) id: c3377e09aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ. | 作成日時:2018年10月12日 17時