観音坂先輩の魅力発見日記。

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｢ 会った方が、良いですよ ｣




観音坂先輩が顔を上げる前に、そう言っていた。きょとんとした瞳が此方に向けられる。思わず口走ってしまった自分を心の中で制止して、小さく咳をこぼした。

わたしなんかが、口を挟んでいい問題ではない。今更だが、そう思う。これは観音坂先輩と朱里くん、二人の問題で、他の人が軽々しく口を挟んでいいものでは無い。
けれど、どうしても言いたかった。観音坂先輩の寂しそうな瞳と、朱里くんの悲しそうな声を思えば、伝えたかった。




｢ もっと真っ直ぐ向き合って下さい。自分の気持ちなんて、言葉にしなきゃ伝わりませんよ。当たり前ですけど ｣




観音坂先輩は、朱里くんのことをどう思っているのか。
朱里くんは、観音坂先輩のことをどう思っているのか。

はっきり言わなければ、相手の気持ちなんて伝わらない。人間なのだから、相手の気持ちを読むことなんて出来ないに決まっている。観音坂先輩は、自分を弱いと思っているかもしれない。朱里くんは、自分を情けないと思っているかもしれない。でも、わたしは知ってる。二人がお互いのことを話す瞳は、たしかに輝いてるってこと。




｢ 言葉にするんです。シンジュク代表、麻天狼の観音坂独歩なんだから、難しくはないでしょう？ ｣

｢ ……！はは、情けねえなあ、おれ ｣




少しからかうように笑ってみせた。観音坂先輩が、眉を寄せて笑う。その笑顔は、やっぱりなんだか幸が薄そうで、あどけなくて、儚い。そんで、言葉に言い表せられないほど柔らかい。目尻に刻まれた皺もゆるりと弧を描いた唇も、桜が咲いたような頬も。見ているだけで心が解れる、そんな笑顔。きっとこの笑顔を見れば朱里くんだって、何も言えなくなっちゃうね。




｢ おれ、朱里に会って話したい。日下部さん、朱里に連絡ってとってもらえるかな ｣

｢ 勿論です。きっと、二つ返事でＯＫですよ ｣




スマホを取り出し画面を操作する。朱里くんの名前をタップして、メッセージを打ち込んで、送る。返事はもちろん、今週の日曜日だった。

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