彼は光になりたかった

#21 ページ27

ようやく終わった。


壁にかけられた時計を見ればあと少しで13:00。


澤藤の話もそこそこに走り出していた。


外套の裾が風に揺らぎ、ばたばたと音を立てる。


なんでこんな暑いのに外套なんて着てるんだよ俺。


急にイライラし始めたが仕方ない。


なんとか店に着いたがすでに約束の時間はすぎていた。


店に入り、一郎の後ろ姿を探す。


あった。


『一郎、くん。』


息を切らしながら額に浮かぶ汗を拭う。


滴り落ちてくる汗がどうしようもなく気持ち悪かった。


振り向いた彼の顔が驚いたように歪む。


「リンさん……」


はあはあと乱れた息のまま彼の向かい側の席に座って、店員を呼び止めた。


アイスティーひとつ、と澤藤のような頼み方になったことから歳を感じた。


割とショック。


『遅れて本当にごめん。待たせちゃったお詫びに奢らせてほしいな。』


「いえ‼いや、普通俺みたいなやつはリンさんに会えるはずがないのに……」


これくらい余裕で待てます、と笑顔で言う彼にありがとう、と微笑んで外套を脱ぐ。


「でも、なんでわざわざ会ってくれたんですか？」


うーん、と苦笑した後になんとなくだよ、と答える。


ちょうど届いたアイスティーのストローを咥えた。

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