彼は光になりたかった

#19 ページ25

入間銃兎side


午前の仕事を終え、昼休み。


一服しようかと近くの橋までやってきた。


先客か。


舌打ちしたい気分になったが、そんな気持ちは次の瞬間打ち砕かれる。


黒い外套に覆われた細い腕。覗く細い脚。


風に揺れ、フードが軽くずれた。


隙間から見える真っ白な髪に思わず息が止まる。


ふっと見えた横顔の美しさに思わず見惚れていた。


そこらの女たちよりも余程長い睫毛に二重瞼の切れ長な瞳。


小さな顔の中に収まった顔のパーツ一つ一つがただただ美しかった。


「そんなに海が珍しいですか」


思わず声をかける。


少し驚いたように振り向いた彼は軽く笑いながら口を開く。


『珍しい、ってわけでもないんですが……』


少し口ごもる。


綺麗、としか言えない。


その直後、彼の唇から紡がれた言葉に頷けば彼は何かを見つけて走ろうとした。


「また、会えますか？」


こんなの、ストーカーと大差ない。


そう自嘲しつつも止められなかった。


少しだけ悩んだ後、彼は曖昧な笑みをたたえる。


『ええ、きっと。また来ますよ』


彼が去っていったあとに気づく、胸の内の靄。


苛立ちを収めるべく、煙草に火をつけた。

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