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#08 ページ14

ダメだとわかっている。


ここで泣いて仕舞えばごく薄くだが施された化粧も落ちてしまうし、目も腫れてしまう。


でも。


視界が曇った。


暖かいなにかが頰を伝う。


周りにいたスタッフが急いで涙を慎重に拭っていくが、涙は延々と流れ続けていた。


ダメだ。


こんなんじゃ、決別できていない。


視界の隅で揺れる白い髪にそっと触れ、ぎゅっと目を瞑る。


涙が徐々に引っ込んでいった。


『……急に取り乱してしまい、すみません。もう大丈夫です。』


スタッフの1人が差し出してくれた手鏡を覗きながら髪型を整え、目元に保冷剤を当てる。


スタジオに入り、ソファに座った。


目の前にいる女性キャスターの顔に見覚えがある。


監督からの合図に合わせ、オープニングが流れ出す。


「皆さん、いかがお過ごしでしょうか。」


女性キャスターの滑らかな口調。紹介されると同時に微笑みながら軽く頭を下げる。


軽く雑談をした後、別の女性キャスターがボードを引っ張ってくる。


「今大人気のシンガーソングライター、リンさん‼今日は謎に包まれたリンさんについて解き明かしていきたいと思います‼」


『はは、恥ずかしいですね。』


仄かな笑みをたたえ、質問に淡々と答えていく。


誕生日だとか、好きな食べ物だとか。


あまりプライベートに踏み込んだ話はしないで欲しい、と事前に頼んでいたのでそこまでされなくて済んだ。


「では最後に。リンさん自身は自分の歌をどう捉えられていますか?」


きた。


少しだけ表情に隙が生まれてしまったかもしれないという焦りを隠すべく、小さく息を吐く。


この質問だけは正直に答えろ、と澤藤に言われた。


この番組で初めて女性キャスターの目を見るかもしれない。


すっと背筋を伸ばして口元に浮かべていた笑みを消す。


今の俺はリンでも山田零華でもない。


誰にもなり切れていない中途半端だけれど、紛れもない俺だ。


紛れもない俺の本心だ。


『僕自身、今まで辛いことがたくさんありました。それを乗り越えられていたら、今ここにはいない。』


予想していなかった返答に微かに女性キャスターがたじろいだ。


気にせず続ける。


『僕が出来るのは永遠に癒えないこの傷跡を全て曝け出して言葉にすることだけです。


だから理解できるところもできないところも僕の曲にはたくさんあると思います。』


少しだけ、胸が痛い。

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ぷにぷに左衛門 - 続きが楽しみです! (2020年12月14日 20時) (レス) id: b1fc0b4e72 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - とっても面白いです!もう更新はしないのでしょうか? (2018年12月16日 23時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
春日音尾(プロフ) - クロりんごさん» ありがとうございます。分かりにくくてすみません、男主です。レス、って言うんですね。初めて知りました……これからも読んでいただけるとありがたいです。 (2018年11月8日 15時) (レス) id: 9bf1cb7bb4 (このIDを非表示/違反報告)
クロりんご(プロフ) - タグに男主って書いてるんですが、これは女主なのでしょうか?後、レスは普通に投稿時間の後にある(←レス)という所を押せば出来ますよー。 (2018年11月8日 14時) (レス) id: 738c9471c2 (このIDを非表示/違反報告)
春日音尾(プロフ) - 枝豆将軍さん、ありがとうございます。至急直させていただきます。ご指摘、ありがとうございました。頑張らせていただきますのでこれからも読んでいただけると嬉しいです。 (2018年11月8日 9時) (レス) id: 9bf1cb7bb4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春日音尾 | 作成日時:2018年11月3日 19時

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