【ツキウタ。】no title【ツキプロ】 (ページ24)

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その頃にも恋はあった。ページ24

小さな時から芸能界にいると、見たくない世界も見えてくる。
少しの失敗で信用を失くす脆い世界だ。
マネージャーは怒るわ、ネットでは炎上するわ、もう最悪なことしか怒らない。
そんな時、泣きそうになるのはいつもの事。
でもいつも隣には温もりがあった。
名前は分からない。年齢も。
何も知らない子だったけどあったかくて、優しかった。
何も言わず聞かず隣にいてくれて。

『誰だったんだろう、あの子』

「恋か」

『恋? 如月? 』

「違う違う。そっちの恋じゃない」

新さんがあたしの目を見て答える。
恋って言われると如月恋しか思いつかないのは許してほしい。

『恋心ってやつですか? 』

「そー」

『んなわけないじゃないですかー! あーんなに小さい時ですよ? 』

「 …ふーん。でも相手はどうだろーな」

思わず目を開き唖然としてしまう。
何を言い出すんだろう、この人は。
だって、まるであの頃のあの子が、自分みたいな言い方を。

『あ、の…もしかして、新さん…? 』

「 ……────さぁどうでしょう」

悪戯っ子の様な小さな笑みを残し共有ルームを去る新さん。
確かにあの時の少年も黒髪に少しやる気がなさそうな瞳だった。
公園を去る時の笑顔がさっきの笑顔と重なった。

『ぁ…か…かけるううううううううｯ! 』

「 ♪ 」

「あ、新さんこんにちは、さっきAが大声で…ってわぁあ!? どうしたのA!? 誰に泣かされたの!? とりあえず恋呼ぶ!? 」

『ｸﾞｽｯ、こぉいぃ… 』

とりあえずあたしはわけも分からず泣いて恋と駆を呼ぶことしかできなかった。
結局真相は分からないままだけどあの子は、新さんなんだろう。

そしてそれもまた、恋だったんだろう。