【8-5】 ページ25
「詳しい話はまた今度話してもいい？…今は…もう少し心の整理をつけたいの。」
どこかで期待しているのは…血みどろ男爵の話が嘘なんじゃないかってこと。彼が嘘をつく理由はないのは分かっていたけれど、あれからずっとこんなことを考えている。
「分かった。君の準備ができるのを待つ。よし、二人ともまだ朝食は済んでないだろ？一緒に大広間まで行こう。」
ハンナとセドリックと寮を出た。
校内はすっかり不穏な雰囲気に戻っている。
「やっぱりみんな、秘密の部屋の話を気にしてるんだね。」
「そりゃ…コリンが実際やられたしね…一年生は特に怯えてちゃってるよ…」
どうやら、みんなでまとまって廊下を歩くようにしているようだ。怯えて団子のように固まる生徒ばかり。
「Aは怖くないの？」
ぼんやりとすれ違う下級生を眺めていた私にハンナが聞いてきた。
「勿論怖いよ……」
“秘密の部屋は開かれたり”
“継承者の敵よ、気をつけよ”
どうやって誰が秘密の部屋を開けたのか分からないが、まさか私が関係あったりしないだろうか。スリザリンの秘密の部屋が作られた当時の状況を考えれば、レーヴ家も無関係ではないような気もする。
サラザール・スリザリン…彼の純血思想に影響を与えた者こそ…
レーヴ一族。
もし、私のせいでこの事件が起きているなら…？
私の抱えている不安はみんなとは違った。
……
ある日の図書室。
そこはいつも静かだった。
私は奥のテーブルに本を広げて、ぼんやりと文字を追っていた
ここ数日、ハンナに常に側にいるように言われずっと彼女と行動を共にしていた…そのせいか一人で過ごす時間はとても久しぶりのように感じる。
読んでいるのは魔法史の本だった。
歴史の本をどんなに読み漁っても、レーヴの文字は出てこない。
血みどろ男爵の話が嘘だったのか…全てから自分の名前を消してしまえるほど、レーヴは大きな力を持っているのか。
「………」
私はため息をついた。
「何か難しいところでもあるのか？」
「あれ…ジョージ？一人？」
本を片手に通り過ぎたのは双子の片割れ、ジョージだった。
「珍しいね、フレッドは？」
「それがマクゴナガル先生に捕まってね。毛むくじゃらになる薬を作って試してたんだ。」
「えっと、つまりいつもの悪戯だね。」
「まあね、それで僕は片割れが帰ってくるまで次の悪戯の参考になるものはないか、図書室で暇つぶしをしてたってわけさ。」
ジョージはそう言って私の隣に座った。
「魔法史か？」
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作者名：まるむ | 作成日時：2023年8月11日 15時
