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「これか、これどっちがいい?」
綺麗な大きな瞳で幾つか迷われながら手に取ったのは深い青の反物と燃えるような赤い反物だった。
『どちらもお似合いですが、青の反物が一段とお似合いです』
「僕もこっちがいいと思ってた。ありがとう」
そう言うと目尻に皺を寄せ優しく微笑んだ。
『次はお前の』
「私は大丈夫です!以前買ってもらった物がありますし......」
『そう言うと思ってもう仕立ててあるから』
何事もないようにさらって言うと店の主人が差し出してきた彼は淡いピンクの韓服を見せてきた。
両班ではなく召使いの身であるから派手な刺繍や装飾品があるわけでないのにとても綺麗で特別な物に見えた。
実際に召使いに着せるには高すぎる反物で作ったのだろう。
『そんな高価のものどうしたら』
困ってジョングク様を見上げると彼はスッと私の頭を撫でた。
「いいから受け取って。父上も皆もお前がよくやっている事は分かっているから大丈夫」
彼はぽんと私の肩を叩くと大丈夫って言うように私の目を見つめた。
『ありがとうございます。ジョングク様』
「うん」
「じゃあ、明洞の屋台でなんか食べて帰ろう」
彼に手を引かれ店を後にした私はとても幸せだった。
素敵な韓服を貰ったからだけではなく幾つになっても彼が私を大切にしてくれていることに安堵して心から喜びを感じた。
彼は事あるごとに私を屋敷から連れ出し、美味しいものや素敵な贈り物をよく送ってくれた。
本来だったら召使いと食事を共にする両班はいないし、ましてや彼の身分だったら尚更あり得ない事だった。
屋敷では別々に食事を取っているが出先では必ず食事を同じように食べさせてくれる。
そんな彼の行動一つ一つが私の心を温めてくれた。
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作者名:Marika | 作成日時:2022年4月24日 23時