検索窓
今日:129 hit、昨日:114 hit、合計:907,545 hit

対処法99 ページ8

.


それはまるで、蒼銀の月の様な澄んだ声だった


夜空に浮かぶそれを、私は夢でも見てるような気分で見上げる

異常な程に大きく見える月を背景に、深雪のようなマントが翻っていて、花びらの様に見えた


『‥‥‥怪盗、キッド‥‥?』


月下の奇術師が、フェンスの上から私を見下ろしている


キッドは一瞬、探偵を前にした時の様な不敵な笑顔を浮かべると、タキシードの襟から銀色に光る銃を取り出した


あれはトランプ銃だ

シュンッ!と鋭い音を立てて私とストーカーの間に降ってきたそれに、ストーカーは慌てて私から距離を取る

キッドはその隙に私の前に降りてきて、私の方に向かって、世界中が魅入られるような素晴らしいお辞儀をしてみせた


「可愛らしいお嬢さん。すぐに終わらせるので、ご安心を」

『え』


次の瞬間、キッドが放った煙幕で何も見えなくなった

『えっ!? ちょっ、』

キッドは身のこなしは軽いけど、肉弾戦は余り得意じゃなかった筈‥‥!

しかし、数秒後にはれた煙の向こうには、すでにワイヤーで拘束されたストーカーがぐったりとのびていた

そ、そうだよね‥‥不得手っていっても、相手が蘭ちゃんとか京極さんとかの話だったらだよね‥‥一般人に負けるわけないか


未だ座り込む私の方をくるりと振り向くと、キッドは片ひざを‥‥逐一洗練された動作で‥‥私の前についた


「お怪我はありませんか? お嬢さん」

『‥‥あ、え‥‥と』


急な推しを前にフリーズしていたが、話しかけられてどっと冷や汗がのぼってきた

安心してたから、完全に油断してた。キッドが来てくれなかったら、間違いなくあのまま締め殺されてた

ニャア

か細い声とともに、叩き付けられた拍子に怪我をしたのだろうか。片足を引きずって寄ってきたヒカリが、私の手をペロペロと舐めた

そうだ。ヒカリが数秒でも時間を稼いでくれなければ、キッドは間に合わなかったかもしれな
い。ヒカリがいてくれなかったら


そう思うと、恐ろしくて、情けなくて、どうしようもなく不甲斐なくて、ヒカリを胸に抱き込んだ。視界の輪郭がじんわりと境界線を無くしていって

『な、んで‥‥こんなことになってんだろ』

「‥‥」

『二人いたとか聞いてないし。 なにもしてないのに‥‥悪いことってどうして重なるの』

「お嬢さん」

ヒカリを抱き抱えたまま膝の頭に顔をうめ、心の底でずっとよどんでいた思いを吐露する

どろどろに歪んだ悲観的な思いだ



.

対処法100→←対処法98



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2117 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4914人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- 面白くて一気見した者です、もう更新されないんですね、この感じだと……。残念です (5月4日 12時) (レス) id: a4dff3124d (このIDを非表示/違反報告)
レモン - めちゃおもろいです!!夢主ちゃんの性格大好きです!更新楽しみにしてますっ! (12月12日 10時) (レス) @page43 id: 18ff82607c (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大大大大大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (11月14日 20時) (レス) @page43 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - イヤァァァァアオワッタ好きですで (9月18日 15時) (レス) @page43 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
猫目 - すごく好きです (7月15日 14時) (レス) @page43 id: 5daa8eb0a9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:りんず | 作成日時:2019年12月28日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。