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利吉side
小「…弥生さんどうしちゃったんでしょう?
なんだかいつもと雰囲気が違っていたような…」
利「さあね…私にもさっぱりさ」
はぁ…とため息を溢すと小松田君はそういえば今日はどんなご用事で?と首を傾げた。
利「見ての通り父上の洗濯物を届けに来たのさ」
私が着物の入った風呂敷を掲げると小松田君は利吉さんも大変ですねと苦笑する。
小「それじゃあ僕お茶の用意をしてきますね。
山田先生はこの時間ならお部屋にいらっしゃると思います」
利「ありがとう。
お茶はいいよ。渡したらすぐ帰るから」
小「分かりましたぁー!
……あぁっ!!!!
学園に入るなら入門表にサインしてくださーいっ!!」
小松田君は塀を登っている侵入者を見つけると風のように走っていった。
利「相変わらず凄いな…」
さっきまでの賑やかさが嘘のように消え力が抜けたように口から息が漏れる。
今回も上手くいかなかった。
頭を埋め尽くすのは私に向ける心底不愉快であると言いたげな彼女の瞳。
利「……いや…私も同じか…___」
つい彼女を目の前にすると感情が顔に現れやすくなる。
普段なら他人に深入りするようなことはしないのに、彼女だけはどうしても気にかけてしまう。
素直になれとあの時言ったがこうも露骨に表情に表されると傷つくものがある。
利「……くそ…っ!」
感情が上手くコントロール出来ない自分に、その原因である彼女に苛つき風呂敷を強く握る。
なぜこんなにも心が乱れる____!
なぜ私は…_____
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作者名:千夜 | 作成日時:2021年9月16日 23時