mission20 ページ20
衣更くんがごはんに呼ばれて、部屋を出ていった
何度か入ったことのある部屋のはずなのに、相変わらずドキドキする
付き合ってた時とあまり変わっていない綺麗にしてある部屋
“いけない”と分かっているのにあちこち見渡してしまう自分がいた
棚の上に綺麗に並べられた写真
デビュー同時のTrickStarのみんなや、幼なじみの凛月くんとのもの
最近のライブの集合写真の中にはあんずちゃんもいた
机の上にも写真立てがいくつもあって、写真の多さから思い出や仲間を大切にしたい気持ちがあることがひしひしと伝わる
その何れにも私はいなかった
「“これで良かったんだよ”」
それなのに心がチクチクする
なんでかな?
ある程度写真を見終わった頃、衣更くんが戻ってきた
「悪い、待たせたよな?メシ、なに食べるか分かんないし、野菜スティック持ってきたけど食べられるか?」
鳴き声と共に頷けば、「よかった」と目の前にことりとお皿が置かれ、野菜に手を伸ばし食べ始めた
「お前、本当に可愛いな」
顔近いから!
とても食べづらいから!
心で叫んでも彼までは届かない
ふっと視線を反らした先には、倒されている写真立て
「あぁ、これか?」
視線に気付いたのかコトリと起こされた写真立て
その中には……
あれ?これって
「はじめて依頼を受けてやったライブなんだ」
知ってるよ、私がプロデュースしたんだもん
「お客さんと一体となってやるライブってこんなにも楽しいんだって改めて感じたよ
その時のプロデューサーがこの子なんだ」
みんなでたくさん話し合ってぶつかったよね
「いつも笑顔で自分の事より他人の事ばっかでさ、自分の事になると不器用で弱虫でそんなとこに惹かれてたんだよなぁ」
意地っ張りで上手く伝えられない私を好きになってくれてありがとう
「俺、本当は別れたくなかった」
ぽそりと消え入りそうな声で呟かれた言葉に思わず彼を見つめてしまう
「俺、本当にAが好きだったんだ
でも、あいつ、なんでも1人で頑張ってるし、足かせになりたくなかった
だから、“別れて”と言われたとき、いやだとは言えなかった」
初めて聞く彼の本音
「でもあいつは、新しい道を見つけてどんどん進んでってさ……
Aが幸せならいいと思ってたけど、やっぱり隣は俺が良かったななんてワガママだよな」
違う、違うよ
全部、私のワガママのせい
ごめんね、ごめんね衣更くん
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作者名:ゆきはな | 作成日時:2018年3月11日 19時