悪役少女は捻れた世界で何を想う【twst】 (ページ2)

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０章＿第１話：茨の夢ページ2

＿＿＿「…兄様」

＿＿＿「…兄様、どこ？」

＿＿＿「…熱いよ、嫌だ」

＿＿＿「…このままじゃ焼け死んじゃうよ」

＿＿＿「…兄様、兄様！」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

＿＿＿

＿

「………夢…？」

酷く長い、悲しい夢を見た。
天蓋付きのベッドからゆっくりと降りると、裾の長い黒いサテンのネグリジェが北の空を彩るオーロラのように揺らめいた。
カーテンを開け窓に近づいて外を見ると、大きな月がもう真上まで昇っている。

「もうこんな時間…。
　はぁ…晩御飯抜いちゃおうかな……」

わざとらしく大きな溜息をつくがその溜息を聞く者など誰もいない。
ペタペタと足音を立てたり、思いきりベッドにダイブしたりと普通のお嬢様ならしないようなお行儀の悪い事をしても誰も注意しない。
仮にも茨の谷の時期王の妹が晩御飯時に起きなくても誰一人として起こしに来たりなどしないのだ。

「…………」

＿＿兄であるマレウス・ドラコニアが“例の学校”に入学してから何年経っただろうか。
別に寂しい訳ではない。
私だってもう兄様が居ないと何も出来ないような赤ちゃんではないのだ。
ただ、兄様が居ないとわざわざ私を気にかける人がいないだけであって、別に寂しい訳ではない。
……寂しい訳ではない…筈だ。

「……はぁ」

…正直に言うと死ぬほど寂しい。
元々私は兄様の為に生まれてきた存在だ。その兄様がいないのにどうやって生きろと言うのだ。

兄様に会いたい。
少しばかり私に甘過ぎる気がするが、そんな所も大好きなお兄様。

「…………っ、ぅ…」

目の奥が熱い。ポロポロと溢れる涙が止まらない。
こんなところを兄様に見られたらどうなる事か…。

「……？」

ふと目を横にやると、そこには１匹の不気味なカエルがいた。
私の部屋は城の塔の天辺にある。そんな高い場所にどうしてカエルが…？

使用人達のイタズラとは思えない。
あの人達は私の事が嫌いというか、多分接し方がわからないだけだと思うからこんな事はしないはずだ。
……こんなこと言って、本当に嫌われてたらどうしよう。

「あの…カエルさん、どうしてこんな所にいるの？
　……はぁ、流石にこんな高い所から放り投げるのは気が引けるし…」

仕方が無い。
少し面倒だけど私がこの子を下まで連れて行くか……。

「ほら、おいでカエルさ……」

『＿＿＿お前がAか？』

今の声……
…もしかして、このカエルが私に話しかけた？