* 海にて「海水浴」 ページ26
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「いい風だねぇ。これなら沖まで流れて行って誰にも邪魔されずに死ねるかな?」
「それ中也さんに聞かれたら問答無用で殴りかかられますよ」
「平気平気、あれくらい避けられるから」
太陽光を遮るパラソルの下で、のんびりと世間話をするような雰囲気で物騒な話を繰り広げるのは、中島敦と太宰治。
以前のプールで散々虐められたからか、芥川が更衣室から動かないため、中原が引きずり出そうと閉じこもっておおよそ三分。
その間、時々更衣室から断末魔が聞こえてくる。
辺りの人間から更衣室へ向けられる目は恐怖の眼差しだが、慣れた二人は一切気にする様子は無かった。
それからまた五分。パラソルへ中原が芥川を引き摺って来た。
芥川の顔は表情こそ普段通りだが、この世の終わりだとでも言いそうな顔色だ。要するに真っ青だ。
「おや、遅かったねぇ」
「なら手伝えや。羅生門で全力で抵抗したんだから仕方ねぇだろ」
「お前上司に何してんの?」
「黙れ人虎!」
「いや正論だよな?」
また他の人からの視線が集まる。
揃った瞬間喧嘩を始めるのだからなぜ海に来たと疑問に思うのは当然だ。
「まぁ、折角来たんだし遊ぶぞ。おい敦、芥川頼んだぞ。俺はこの糞鯖が沖に出て行くのを止めないといけねぇ」
「ちょっと、なんで海に来てまで蛞蝓と一緒に行動しなきゃいけないわけ?というか海に入った途端に溶けるんじゃないの?」
「おう、なら家から出てけ」
「それは嫌」
何だかんだ喧嘩をしながら海へ向かう二人を見送った敦は、芥川の黒のラッシュパーカーのフード部分を掴み、海の家へ浮き輪を借りに行く。
「ほら、前は悪かったって。入るだけ入ろうよ、今日暑いし気持ちいいよ」
足首が水に浸かり、ひんやりとした温度が気持ちいい。敦が誘うも、首を全く縦に振らない芥川。
そこで最終手段に出る。
「中也さんに飯抜きにされた挙句風呂に強制的に入れられても知らないからな!」
この家で、芥川が最も恐怖を感じる言葉である。
その言葉に応じた芥川は敦から浮き輪を受け取り、渋々海へ入った。
少し表情が緩んだことから、気持ちいいらしい。
のんびりと二人で海に浸かっていると、ふと何かが目に入った。
「なぁ、芥川。あれって何だと思う?」
「太宰さんと中也さんだ」
「仲良いなぁ、二人とも」
競泳選手顔負けの綺麗なフォームのクロールで二人の前を横切っていく。
二人に聞かれた瞬間此奴も死ぬな、そう思った芥川だった。
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儚奈(プロフ) - くるみるくぎゅにゅうさん» 今書いてる途中です!なるべく早くあげますね!でも、あまりそういう私個人の作品のことは此処では言わないで頂きたいです…他先生の方にも通知が行ってしまうので……。兎も角、もう時期更新しますので、すみません (2019年10月12日 17時) (レス) id: 474b6fc94d (このIDを非表示/違反報告)
くるみるくぎゅにゅう - 猟犬の方更新しないんですかー? (2019年10月12日 15時) (レス) id: 77ec145bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アフリカまいまい | 作成日時:2019年5月23日 7時