長男要らない説【松】

twenty-six side.you ページ31

俺がここに来て、
今は何日目なのだろう。


ずっと同じような暗さだから、
曜日感覚は完全にわからなくなった。
いつ日が落ちているのかもわからない。


ここに来てからの生活は、
言ってしまえば地獄だった。


実験だ、研究だ、と
過多な血液採取をされたり
色々な薬を飲んだり。

暴力を加えた際の反応を見るため
抵抗力が皆無な俺を殴ったり蹴ったり
ナイフで切りつけたり。

一度骨を折られそうになったこともある。

アイツの幻覚を見せる能力で
弟達が俺を殺しに来るのを
見せられたこともある。

少しでも抵抗すれば
毒の効果が落ちたのでは、と
更に毒を盛られたり。

まともな食事や睡眠も出来ていない。


両手首に、黒く無機質な
リストバンドみたいなものをはめられた。

恐らく金属製のそれは、
ゴースターで開発した
能力を使えなくするものらしい。

闇属性の効力は相当らしく、
今はまだ見れなくて良いから
勝手に出て来ないようにするためだ、
そうゼオが言っていた。

勿論炎だって使えない。


まともな栄養を摂っていないせいか、
最近では視界が霞むし歩けもしない。
最初の頃の拷問で叫び過ぎたのか
喉がやられて、痛くて水を飲むのさえ辛い。
声を出すと痛みが走る。


自分でも思うけれど、
とてもじゃないけど七つ子の
先頭に立つような長男ではないな、もう。


寒さと恐怖心で震えが止まらない。


「A」


最早聞き慣れた声に顔を上げる。

ゼオは俺の事をちゃんと
名前で呼ぶようになった。

ただ、他の研究者は
改めず俺をゾークと呼んだ。



「実験の時間だ。体調はどうだ？」



そう言われ、俺は首を縦に振った。

声が出しづらいので、
昨日と変わりなければ縦に
何か違えば横に首を振って
具合を伝えることになっていた。

薬の効果が知りたいらしい。


「そうか。じゃあ行くぞ」


そう言ったのと同時に足枷を外される。
研究者達に支えられて歩く。

ゼオが「実験の時間」と言った場合
俺にとって拷問のようなことを受ける。
「研究の時間」と言われた時は
検査や薬の摂取が殆どだ。


拷問といっても、
ちゃんと死なない程度のものだ。
死んだら困るのは向こうだし。
ただ死なない範囲なら何でもしてくる。



.........やっぱ、来ないよな。あいつら。



弟達の幻覚を見せられた時が
正直一番キツかった。

解毒されて、能力の制御もなかったけど
俺は一度も反抗出来なかった。





幻覚だって、わかってんのになぁ。

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