もう一人の、人斬り。【るろうに剣心】(加筆・修正中) (ページ10)

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第一話　平和と異変　拾ページ10

その頃――――。
「東条。進んでいるか？？」

「ああ、それでもうすぐAの絶望する顔が見られる。桂」

アジトの一室で密かに笑みを浮かべる二人の男が、いた。

「コイツの性格を利用できる最大のチャンスだ」

「その最大のチャンスとはどのようなことをするんだ？？」

「アイツに俺を殺させる、誰かに殺させるかのどちらかだ」

「彼は不殺(ころさず)を自らに律している、彼は使わない……が。協力をしてもらうかもしれない」

「協力？？じゃあ、どうするんですか」

「それは考える必要があるな」

「そうですか。では私はこれで」

そう言って、踵を返した桂に東条は声をかけた。

決して、彼女にバレるな、よ……

「そういったやり取りも、していたのにな……」
東条は、遺影に向かって手を合わせる。
そう、桂は故人となっていたのだ。

東条は、知人に「桂さんは崖から落ちてなくなりましたよ」と言われていたのだが、幕府の資料を見た際、「脳症で死亡」と書かれていたのを見て裏切られたのである。

吐き捨てるように「崖から落ちたっつーのは嘘で、亡くなるまではちゃんと幕府のための尽力してたんかよ……、騙されたな……あん若造め……」と嘆いた。

「……俺が、お前の分まで、達成させる……俺を、見守っててくれ……」

懇願しているかのように。寂しそうな声色だった。

「……A、俺が、こんどこそお前を最高の戦争装置――――人間兵器にしてやるから、楽しみにしとけ」

東条は己のカバンから研究記録を取り出した。以下、その全体的背景である。
その研究記録には日記ではなく、報告形式でこれまでの経緯、と被験記録である。

通称――人斬り別名――『人間兵器』

東条は未来に先駆けて、西洋の戦争にも勝てるような人材を、増やさなくてはならないと感じていた。
しかし、この時代、小銃もなければ騎兵銃もない中で刀を持って戦うとなるととても不利だ。だから、今のうちに戦闘本能だけは磨いておかなければならない、と思い立ったのだ。

その戦闘本能を磨くために彼がしようとしたのが、まさに実験で。彼は戦闘兵器の人間を、作ろうとしたのだ。

戦闘を命令したときに異を唱えることがないように、徹底的に戦闘、戦争に特化した人材を作らなくてはならないと彼は考えた。そして、あの日派閥のメンバーから報告を受けて、彼はその場所に赴いた。