もう一人の、人斬り。【るろうに剣心】(加筆・修正中) (ページ9)

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第一話　平和と異変　玖。ページ9

毎回毎回、幼い私を床に叩きつけながら怒鳴る母上。

“お前なんて、いやお前も母さんも生きてる価値ねえなあ！！”

逆上して母上と私を殴り、蹴る父上。

“おら、いたい、か？”

母上の喚く声に私も涙を流していたあの頃。

まさに生き地獄だった。毎日、毎日この暴言、暴力に耐えてきたの。ねえ？私、偉いよね？

過去の記憶にそう感じていたあの頃の私はもう去った。
「Aとは……ちが、う？？当たり、まえ、だ。きょ、ねん、アイツと闘ったからな。負け、たが……。そろそろ終わり、だな」

意識が朦朧としながら俺は言葉を発する。
本当に終わりだ、せいぜい苦しんで死んでもらいたいのだが、なにせ本来の愛刀がいまはない。
だから少し名残惜しいが、普通の刀で、お前には散ってもらおう。

「うんうん。死ぬ覚悟ができてるのはいいことだよ？？さあ、苦しまないように殺してあげるねえ！！」

腰の刀の鞘に手を掛けた。
「まて！！お前の目的は、なんだ！！ぐっ、あああ――――！！」
目の前の男はもう死ぬというのに、命乞いか、馬鹿馬鹿しい。

(ふふっ。でもあなたの死に際とっても美しい、とっても……)
「……私は東条様に従っているから東条様の命は絶対なの。理由は言えないんだ。ごめんね――――さようなら」

こいつの目的がわからないまま、俺は刺された。とても尋常じゃないほどの痛さと、殺され、死ぬのだという無力感でいっぱいになった。願わくば……俺は、緋村とともに……戦いたかった。

「もう行かなきゃ。東条様に怒られちゃうよ。じゃーね――――って死んでるから意味ないか。私ってばうっかり～」
遺体を残し、女剣士は森を軽快な走りで抜けていった。でも。彼女が走ったあとに感じたのは――――。

(はは、……これで巴の家族は事切れた……。なのに、どうして、悲しいんだ……。私は裏切った人を許さない。でも、巴は私を裏切ってない裏切ってないのに―――)

「どうして……」

あーやめやめ、そんな思考していたら東条様に怒られてしまうわ。それに凄惨に殺したんだからありがたいと思いなさい。

そう思いながら去っていった彼女の後ろには、あおむけで寝せられている身体から、いたるところどころにわたって血が流れているむごいものがあった。

彼はそう言って、うつむきながら密かに笑みを浮かべる。