もう一人の、人斬り。弐。【るろうに剣心】 (ページ10)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:4,629 hit

第四話　行方と恋愛事情？？　弐拾壱。ページ10

「あ……。剣心。」
そう言ったのは誰だったか。薫だったか。
実花は彼をみたときから、ずっと満更でもない表情をしている。薫はただただ助けを乞うように、剣心を真剣に見つめることしか出来なかったが、あることで薫はAの肩を強引に押すことが出来たのである。
「Aさん、やめてよ。」
「えへへ。薫～、薫も好きな人出来たらこういうことするかもでしょ？？」
「ちょっと！いい加減にしなさい！！それに私にはッ、まだ早いわ。」
「そんなこと言ってえー、実は興味あるんでしょお？？」
「な、なに言ってるのよ！？」
「妙(たえ)さんと、こっそり見ていること知ってるんだから。」
「なっ！！あ、あれは妙さんが勝手に見せてくるからで……。」
「ふーん。そう。」
Aさんは子供に見せるようであり品のある声でふふっと笑う。妙さんは、牛肉を扱うすき焼き店赤べこの従業員で、剣心たちと交流がある美女店員である。終わる気配がないこのやり取りに薫は呆れながら言った。
「な、なんなのよ……。しつこい。」
「しつこいことなんてしてないよお？？」
「それがしつこいっていってんのよ。しばかれたいの！？」
そう言われたAは、きょとんとなにが起こっているのかわからないように、首をかしげながら、「ん？？しつこい女は嫌われるよお？」と言う。
すると薫は堪忍袋の緒が切れたのか、怒り口調で吐き出すように言う。
「Aさん。なに言ってるのかわかってる？今の体制やめてもらいたいんだけど？」
「薫。」
「なに？？」
「接吻しよう、」
「は、馬鹿？？」
「――あやや。ご勘弁を。」
とうの本人はというと仏頂面で実花を見ながら、彼女の名前を怨念のように呟いていた。
『馬鹿、消えろお。もうお嫁に行けないかもだろ。』
「ほう。これは。」
「剣心も感心してるんじゃなくて助けてよ。」
まだ早くはないよお。と言う声がかえってきたが、聞こえていないふりをして剣心にそう言った。すると彼から困惑した声が帰ってきた。助けると言っても拙者はどのようにすれば良いのか、と。

「剣心からそういう気が利く声、かけてよ。」
と言いたげな顔に俺はため息をはいた。起きたら既にAが薫殿にまたがっている光景を目に納めたのだ。本当に意味不明だ。なぜこのようなことをするのかが理解できなかったが、俺の起きたときのあの一言で、事態はますます悪化したように思う。