もう一人の、人斬り。弐。【るろうに剣心】 (ページ22)

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第五話。利用されるということ。拾参。ページ22

そう言うと、やはり、か。という声が聞こえた。
「聞こえなかったわよ。」
「お前たちと合流したあと、Aがいる方向から危機、というか微弱な音、だな。それを察知したんだろう。すぐに緋村は音のした方向に向かった。」
「な、なに言って、勝手にいなくなるとかあり得ない……。」
「なんでそう推測することが出来るのかしら？？」
そう恵が聞けば、静かに目の前の人物は口を開いた。

左之助の首もとに向けられた刃の切っ先を冷や汗を感じながらみていたとき、男の声が聞こえた。
「祭り、は中止じゃ！！」
その声を聞いた途端、この場は混乱するだろう。と、読み取ることが出来た左之助は刀の切っ先を、傷がふんだんにつき、血が出ているその右手でがっしりと掴もうと腕を伸ばすが――。
「不味いな。一旦退くか……？？」
「は、？？」
その刀は左之助が触れる前に鞘へと納められる。それを目前にし、間抜けな声を出した。
すると見張りをしていたのだろう部下が来て言った。
「いや。大丈夫そうだ、お嬢様が動いていないのなら、俺たちが動く必要は、ない。」
みてみろ。納得できない、という日南平の様子を感じ取ったその部下は、そう言った。俺たちに気づきながらもこちらに向かっては来ない。これは不思議ではないか？？とやってきた部下は日南平の目をはっきりとみてそう言う。
「た、しか、に。そう、だな。」
普通ならば騒ぎを聞きつけ、警官がくるだろう。だが、来ない。まるで見えていないかのように、人々は逃げていった。
「たしか、に不自然、だ。」
「まるで、結界、みたい、だ、――ぐほ！？」
そう言ったのも束の間、倒れていたはずの左之助の拳がもう一人の部下に当たった。
「お前たちの話は俺にはよくわからん、だがな、まだ終わってねえってこと忘れんじゃねえぞ！！」
「そうだ、なんとしてでも助ける！この逆刃刀でっ、お前を、倒す！！」
「ほう、勝てるならな、まあお前らでは無理だと思うがな。」
菜穂がいる数メートル先で、二人と五、六人の部下の誠悦な闘いがまた始まった。

「跡をつけていたからな。」
薫と恵を驚かせたのはその言葉だった。
「え、つ、つけてた、ってじょ、冗談、でしょ？？」
「ふん、薫、お前は馬鹿だな、私が言っているのは本当のことだ。決めつけるのか。」
「そ、そんな、こと、ないわよ！！菜穂さんこそそういうのやめてよね」
「はあ、だから最近の若者は。融通が効かない……。」
呆れるようにその場に菜穂は項垂れた。困惑する薫。