第五話。利用されるということ。拾弐。 ページ21
つまり、薫たちは聞き取ることができないということ。
「な、なんで、牢に」
恵の口からその言葉が漏れた。
「この機械は東条英機が、貸してくださったものだ。ちっ、敬語使うのも鬱陶しいがな。ああ、そうだったな状況が把握できてないだろう、教えてやる。仕方ない、日南平残りの説明を頼む。めんどくさいからな。」
「ええ。わかりました、お嬢様。この機械は――――」
説明を受けながらそのリアルタイムで流れる映像を注視する二人。この機械は西洋で開発されたものですぐに今のこの出来事を動きのある、『写真』のように収めることが出来る優れものだそうで。
「つまり、この端末、は写真のように今、をおさえることができるってわけね。」
「ああ。その通りです。さすがですね、恵さん。」
薄暗い地下牢を写し出す
そう言っている間に端末内からなにやら機械の起動音らしきものが聞こえ、一同画面を注視すれば。
『あ、ああ……っ、やめ、ろ……、やめ、てくれっ、……。たの、むから、な、あ。Aにっ、……、あ、あ゛……！！』
「剣心！？」
「剣さん！！」
その端末内の音声とともに薫たちの横のほうで刀の音とともに、
「がはっ。」
「ぐっ、あ゛―――」
悲痛な声が響き渡り(床、というか土だな。)に倒れ混む二人の姿を、薫と恵は目にしたのだ。
「！？弥彦！！左之助！！」
「弱い。お前たちは所詮この程度か。だったら――」
そう菜穂がつれてきた部下の一人がそう言って刀を左之助の喉に向けた途端、町の人々がいよいよ異変を察知したのかなんなのか、「祭りは中止だ！！」という一人の男の声で縦横無尽に逃げ、駆け回り始めた。だが町の人々は元凶である薫たちに近づくこともなく、ぶつかることもなかった。こうして一瞬のうちに、祭り会場は賑わいを消し、閑散としたのだ。閑散としてしまった会場をぼんやりとみながら薫は聞いた。
「っていうかそもそもなんでいなくなったの。」
そう言えば菜穂は怪訝そうに薫を見て、一言。気がつかなかったのか、と。
「は？ 」
「気が付かなかったのか？？音、に。」
「おと……？？」
第五話。利用されるということ。拾参。→←第五話。利用されるということ。拾壱。
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作者名：みーー | 作成日時：2022年10月3日 5時
