第五話。利用されるということ。玖。 ページ18
「ちっ、はあ、残念だ、作戦通りに全然うまくいかねえ。こんな命令をしやがって東条め、この糞やろう！！」
その声を聞いた薫は絶句。なぜなら、
「え、な、なん、で。……。」
そう。声だけじゃない、頭巾に隠れて、よくみることができなかった顔、もよく見れば。
着物姿。
「あ゛！？」
背中側に帽子がついた頭巾を被る目の前の人物。身長は薫と同じかそれ以下か。いつのまにかなにかあったのかと不安そうな町の人の視線も。ほとんど、私たちに注がれていたのだ。
(！！み、見られてっ……、ま、まずい、これ以上騒ぎを起こすと、警官、がっ！！それ、に。)
私がそう思っている間にも、どんどん、なにかこそこそしている人たちが増えてきてることに、ただただ、焦る。そのことに、薫の脳は警鐘をガンガンとならし始める。
菜穂、さんだっただなんて。
「あ、あな、た……。この、前居候しに、きていた、な、菜穂、さ、ん……？」
そう、あのとき、
「……。おまえ薫か、それと、恵、ね。よくあんな二人のそばにいたな、お前たち全員糞やろうじゃねえかよ。」
(く、くそやろうって、何様、よ。しかも剣心たちをそんな風に呼ぶだなんて。)
こんなに口が悪いとは思わなかった。それに今がそうなら、あの優しさは一体なんだったのだろう。そんな態度を見せるのなら、最初から優しくしなければ、良かったのに。驚きとともに、剣心たちのことを馬鹿にしてきたことに、心底嫌気がさしたとともに怒りも沸々と沸き上がったのをひそかに薫は感じた。
『すみません、事情があって帰れなくなってしまいました。なので停めていただけませんか！？』
こちらの合意もなしに、強引に押し掛けてきた女。その女は先程までの甘ったるさが嘘のように態度を豹変させる。吐きすてて、罵声をこちらに浴びさせてきて。それを私たちはみているわけだから、ただただ唖然するしかない。信じられなかった、どうして。だって裏切るとかそんな素振りなんてなかった、感じられなかったのだ。むしろ私たちに親切で、とっても優しかった。
“薫？鍛練？私もやるよ。相手、したげる”
“Aさん、剣心のこと好きなんだ？”
“どういうところが好き、なの？”
“さあ、出来ましたよ、私の渾身の料理、鯖の煮付けです！！”
“わたし、Aさんと、緋村さんのこと、好きなんです、あなたたちみたいな人に、私は、なりたい。”
「どう、して、な、菜穂、さん……。」
戦意喪失。
第五話。利用されるということ。拾。→←第五話。利用されるということ。捌。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みーー | 作成日時：2022年10月3日 5時
