もう一人の、人斬り。弐。【るろうに剣心】 (ページ11)

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第四話　行方と恋愛事情？？　弐拾弐。ページ11

とはいっても俺は今まで気の利いた一言で、上手く場を乗りきった経験が全くと言っていいほど皆無だ。考えても考えても浮かばない。辛うじて浮かんだのが。
「A殿。薫殿が困っているでござろう。ここに来ると良い。来るか？？」
ふにゃり。情けない笑みだと自分ながら思う。俺はそう言って、畳に座っている自分の懐に彼女が来るように、床を叩き指図をすることしか出来なかった。
「はーいっ。今行……、――え。」
Aの肩が、トンっ。とおされ、背中から。――倒れた。実花は意識内にひっこみ、その反動で表へと顕現したAは、衝撃が来るかもと思わず目をつむった。
「――おっと。」
その衝撃は来ず。受け止められた感覚がした。背中に温もりという感覚が。――衝撃が来なかったことに疑問を抱いたAが目を開けると、目の前にいるのは薫。ではこの腹、正確にいえば鳩尾にある手、は？？
(赤、い着も、の。もしかして――。)
「けん……しん？？」
「左様。」
「あ、ありがとう。」
申し訳なくて、とりあえず。遠慮がちにそう言えば彼は一言おいてから、言葉を発した。彼はなんだか怒っているようだ。
「薫殿が困っているでござるよ。」
「あ、あれは、実花、が……。」
彼はその一言に一瞬眉を潜めた。
「言い訳をするつもりでござるか？？」
「言い訳って……。私は、事実を述べただけだよ……。」
「世の中は過程、ではなく結果、でござるよ。」
「でもあれは……。」
そう言えば視点は逆転した。さきまで薫がいる方向に向いていた身体は、彼を見上げる形となっていて。
「剣心？」
「まだシラを切る気か。A。」
「え。」
彼はAの肩に手をおき、言った。
この状態に嫌気がさした薫は、彼の名を呼んで口許をパクパクと動かし、去っていった。
「薫？ねえ、剣心、薫はどうしたの、なにか言ってるみたいだったけど。」
(わ、た、し、け、ん、し、ん、の、こ、と、が、す、き、で、す、……か。俺……。薫殿――薫。)
「好きだったよ。心から。本当にすまない。」
Aはこの一言に首をかしげ、彼はさきのAへの一言に言いすぎた、と謝った。
「そんなことないよ。むしろ言ってくれて良かった。さあ、行こうか。」
「ああ。」
そう言って襖、いや東条の拠点を後にした。
そりゃあ勿論世の中は、結果だということを認めることが出来ない私が、悪いのは重々承知だけれども。
(理不尽だよね。この世の中。)
そう思った。