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やっと店から離れられたのは深夜の3時。
電車が動いてる訳もなくタクシーで帰る。
タワマンの下でタクシーを降りてなんとなしに花壇に植えてあるオレンジ色のポピーを見つめた。
ポピーの花言葉は「恋の予感」。
柄にもなく花が好きで謎についてしまった花の知識を自分の中に落とし込み、さらにその花言葉にもすこし笑ってしまう。
恋とか愛だなんてあたしは信じられない。
店に来る客の多くは行為中かその前後にあたしの名前＿勿論「蘭」の方＿を囁いて愛してるだとか言う。
なんて馬鹿馬鹿しくて信憑性に欠く言葉なのだろう。
ふとそのオレンジのポピーを見ていたら思い出したことがある。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿…
養護施設に入った後あたしは周りの大人は勿論、施設の同年代の子たちにも馴染めずにいた。
毎日施設の校庭のような場所で誰も使うことのない寂れた滑り台の頂上に座っていたあたしは誰とも関われない寂しさがあるのにどこかで他人と線を引いていた。
しかしある日をきっかけに1人の少年によってそれがなくなる。
「さみしく、あらへんの？」
突如降りかかった声に後ろを振り向くと滑り台の階段を登ってきている同年齢くらいの男の子。
あまりに突然のことで目を丸くして首をかしげるとその男の子は思い出したように ちょっとまってて と言って階段を降りて行ってしまった。
彼の行動を上から目で追うと、彼は施設の中にある触っちゃいけないと強く言われている花壇からオレンジ色の花＿なんの花だったかは流石に覚えていない＿をぶちっと引き抜いて急いでこちらへ戻ってくる。
そして階段を登ったところであたしにその花を差し出して、眉を八の字に下げて、
「この花君に似てるなぁ。」
って意味のわからない言葉を笑顔で語りかけてきた。
それからは彼のおかげで施設の子たちには大分馴染めたのだが、ある日彼の里親が決まったらしく施設から彼は神隠しにあったように消えてしまった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿…
少し嬉しくも切ないそんな記憶を全て引っ張り出したところで我に返ってタワマンのロビーに入り、強面な警備員の横とオートロックを抜けるとエレベーターホールには大きな花束を持った男性がいた。
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作者名：森 らんげる。 | 作成日時：2019年2月9日 17時
