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「あ、僕ね、ここのお店のお洋服着てSNSに写真あげてるんですよ〜。」
Shota. という文字の下に某SNSのユーザー名が書かれた名刺のようなものを隆ちゃんと繋いでいた手を解いて受け取る。
「毎日その日着てる洋服アップしたりこのお店の新商品の着こなし方とかについても載せてるんで良かったらフォローとかしてくれると嬉しいねんけどなぁ。」
わざと親しみを込めてか関西弁で喋る彼に天使のような笑顔で首を傾げられてしまってはフォローするしかない。
なんて商売上手な人なんだろう。
「彼氏さんも是非僕のアカウント覗いてみてください〜。」
ショウタさんが隆ちゃんの方を向いて目尻に皺を作る。
いや、彼氏じゃないんだけどな と心で突っ込んだけれど、事実あたしの左手は隆ちゃんに繋がれていたわけで勘違いされても仕方ない。
「あ、僕ちゃんと彼氏に見えてます？良かったぁ。」
なんだかその言い方だと隆ちゃんがわざとあたしの彼氏に見えるように振舞っていたように聞こえる。
「お店の中で手なんて繋いじゃって彼氏以外の何があるんですか〜。」
どうやらショウタさんは本当に隆ちゃんがあたしの彼氏だと勘違いしてしまったらしい。
でも今ここで いや、この人彼氏じゃなくてただの友人です なんて言っても手を繋いでいた事情も合わせて説明しなければいけなくなりそうだから黙っていた。
「あ、そうだぁ、お姉さん、そのワンピース一回試着してみませんか〜？」
いつもはめんどくさくて試着なんてせずにフィーリングで洋服は買ってしまうのだけれど、ショウタさんの提案に既に盛り上がってしまっている隆ちゃんを止められそうにない。
ショウタさんに試着室まで案内されて満面の笑みで ごゆっくりー と言われながら試着室のカーテンを閉められる。
ショウタさんの後ろにこれまた満面の笑みで手を振る隆ちゃんも一瞬だけ見えた。
ごゆっくりと言われたものの2人を待たせるわけにはいかないのでささっと着替える。
袖の部分が透けているシフォンワンピースは自分で言うのもなんだけど結構似合っている、気がする。
おずおずと試着室のカーテンを開けると少し離れたところで隆ちゃんとショウタさんが談笑していたけれど、こちらに気づいて振り向いてくれる。
「…どう？」
スカートの裾を持ってすこしおどけてみたら隆ちゃんは何も言わずに目を見開くだけだった。
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作者名：森 らんげる。 | 作成日時：2019年2月9日 17時
