もしも……………… 2nd

α9 1番の愛はキミだけに、 ページ30

「黒木君！！」

そう言ったのは、私じゃなくて

私より高くて、きれいな声

透きとおったソプラノ


“心配”している声

黒木君を、“大切に思っている”声


振り向けば、“あの子”がいた

公園を過ぎた先で、黒木君に頭を撫でられていた“あの子”


“立花 彩”さん


立花さんは傘はさしていたものの、両肩が濡れ足下もびしょびしょで、肩で息をしていた

そしてバシャバシャと黒木君のもとまで走り、黒木君を


黒木君を、



――――――――抱きしめた


その拍子に、傘は立花さんの手から落とされる


黒木君はしばらく呆然としているようだったけど、見開いた目をふっと緩め、立花さんの背中に、


――――――――手をまわした


さっき立花さんがいたところから、私はきっと丸見えだっただろう

でも、まるで私には興味を示さなかった


視えなかったんだ

見えていたけど、視えなかったんだ


黒木君しか、映ってなかったんだ



2人は、雨の中抱き合っていた


この世に2人しかいないかのように

この雨は2人のために降っているかのように


2人は、愛し合っているかのように



2人は腕を緩め見つめあい、立花さんは照れたように笑う

黒木君は


――――――愛しそうに、頬を緩めた


そのまま立花さんを抱き上げ、屋根のあるところにいく

立花さんはハンカチを出して、黒木君の髪や頬を拭いていた

黒木君はそれを取り上げ、濡れていない面を出して、立花さんが自分にしたように、やさしく拭いていた

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