もしも……………… 2nd

α8 黒木君の内緒ゴト ページ23

「だいぶ落ち着いた？」

「うん、おかげさまで」

「皆うるさかったね、ヤキモチってなんだーって」

「ははは………。言わないでくれたんだね………」

「ははっ。………でも良かった。2人にしてくれて」

「え？」

黒木君はベランダの外壁に組んだ腕をのせ、遠い眼で、外を見た


ベランダで、4階なのもあって、後ろは夜景

ビルの明かりや、駅前のイルミネーションが、視界をうめる


その中心に、黒木君がいる


「ず…………っと言えなかったから。…………ありがとうって」

え……………？


「死んでたんだよな、今思えば。

あの頃、何をしても何を言われても、なにも思わなかった。
なにかひとつ問えるなら、人生って、楽しいものなの？って、問いたかった。

じゃあ、俺のこれは何なの？って。人生じゃないの？って」


黒木君はきっと、あの頃(・・・)のことをいっているんだろう

本当に“独りぼっち”だった、あの頃


「年2回の地獄が無ければ、すっげえ幸せなのにって思ってたくせに。

無くなっても、幸せなのか分かんなかった。

何を求めてたのか、分かんなくなった。

……………それならもう、要らないって思った。



……………………けど、あいつらがいた」


黒木君の瞳が、私を捉える


「アーヤがいた」


黒木君は口角を上げる

取り繕った笑顔じゃない


“本当”の


「覚えてる？あの日アーヤが言ってくれたこと。あのとき思った。

こんなのでも必要としてくれるなら、そんな世界があるなら、生きてもいいかなって。

そんでもし生きるなら、」

「KZ(あいするひと)のために生きようって」

「くろきくん……………」


「ありがとうアーヤ。


君が黒木貴和(俺)に、生きる意味(命)をくれた」




アーヤ、ごめん

どうかこれだけは、今は言わせないで

いつか、きっと言うから



今だけは、内緒にさせて







愛してる

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