もしも………………

α5 大人KZの日常〜和典先生の1日〜 ページ31

「かずのりせんせー、さよーならぁ！」

「さようなら、気をつけて」

俺の仕事は基本、全ての棟の見回り

時々助っ人で治療したりはするけど、そんなことはほとんどない

資料整理も終わったし、特別な急患が来なければ、今日は早く帰れそうだ

そう思い、1人で満足していると、誰かに白衣を引っ張られる

振り向くと、子供が3人、ニコニコして俺を見つめていた


すっげぇ嫌な予感……………


「何か、あった………？」

そう言った数秒後、案の定、嫌な予感は的中した

「さっきねー、みんなでおえかきしてたのーー！」

「でもそこに、かずのりせんせーがきたからぁ、
あそびにいこーってなって、ぼくたち“だいひょー”できたの！！」

「だからねぇ」

「「「せんせー、あそぼーー！！」」」


しまった………

来るんじゃなかった…………

よりによってこの、飯食べた後の元気な時間に………


俺がそんなことを考えているとは知らずに、子供達は手やら白衣やらをぐいぐいと引っ張る

「せんせーはやくぅーー」

「みんなまってるんだよぉーー」

「はいはい分かったから。引っ張らないでー」


.....


「で？何するの」

「「「「おえかき！／パズル！／おにごっこ！／つみき！」」」」

見事にバラバラ

しかも何か険悪なムード

「おえかきがいーい！！」

「おえかきはさっきやったじゃんか！」

「おにごっこはできないひともいるじゃん！」

「え〜〜パズルじゃないのぉ〜〜〜」

その後も、ぎゃーすぎゃーすと騒ぎ立てる

そこで、俺は1つ、パン！と手を叩いた

「じゃあこうしよう。最初にお絵描きして、今書いてるの終わらせたら、次パズル。
その後積み木して、鬼ごっこは無理な人いるから……かくれんぼしよーぜ。

それで良いだろ？」

ちょっとざっくりまとめすぎたかと思ったが、割とそうではなかったようだ

全員目をキラキラさせて、笑っている

「せんせーすっごおい！！」

「せんせーあたまいーじゃん！！」

「あー、何だその態度」

「きゃはははは！！せんせーこわぁい！！」

やっぱり、子供は苦手だ

でも。

同時に、好きだと思う

それは多分…………どことなくあいつに似ているから


純粋な瞳

時折見せる無邪気な笑顔

楽しそうに笑う声


やっぱ、どこにいても思い出すな………

そんな自分を切り替えようと、子供に目を向けた瞬間






「上杉君！！」

聞き慣れたソプラノ

あいつの、声

振り向いて、その姿が視界に映る


「立花………」

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