もしも………………

α5 大人KZの日常〜和典先生の1日〜 ページ28

最後に残ったのは美門と俺

先程まで立花が一緒で、彼女が、「じゃあ、また夕方に………」
と降りていった後は、互いに力が抜け、一緒にため息をついてしまった

さすがに苦しすぎた……………

電車に乗ってすぐの頃は、2人に対して不満を持っていたが、
気まずそうにする彼女を見ながら、その不満を保つのは難しかった

何事も無かったかのように振る舞えば良かった、と、誰もが後悔しただろう

駅までの道で、彼女に対して怒りをあらわにしたのも、裏目に出た

俺たちはただ、彼女がこれからこういうことをしないように、と、
善の気持ちで言っただけだった

“あのな、アーヤ。今回のことは、
確かに、砂原が勝手にアーヤの手首を掴んで、離さなかったのも悪い”

“けどな、話聞いてたらお前、砂原のネクタイ結ぼうとしたんだって？”

“そんなことしちゃダメだって、分かんない？”

“第一今日は、その……生足出してるし、首にかけてるそれ！
それあれだろ？去年の誕生日、砂原から貰ったやつだろ？”

“そんなカッコでそんなの見せられて、そんなことされたら、
砂原はおろか、俺だって、男全員コロッといっちまうもんだって”

“だからもう、これからはこんなことすんな！
誰に対しても、絶対、何があっても、す・る・な！分かったか？”

立花にそう言ったのは若武だったが、
俺達も、そんな若武を止めたりせず、後ろで頷いていた

言いすぎたか………？

そう考えると、またため息が出る

すると、隣のつり革につかまっていた美門が、俺を見てふっと笑った

は………？今俺のこと笑った………？

理由は分からずとも、笑われて嫌な気持ちにならないわけがない

「んだよ。何笑ってんだよ」

俺がそう言うと、美門は片方の口角だけを上げて、こう言った

「だって。今のため息、アーヤのこと考えてたんでしょ？
俺と一緒だな、と思って。これが若武とかだったらこんな悩まないのにね。

…………アーヤだから特別考えちゃう、ってやつ？」

…………図星だ
当たっている、全部

でも、それに言い返さないほど、俺のプライドはもろくない

「んなんじゃねぇよ」

「はいはい言い返さない。図星なの丸わかりだから。
顔に書いてあるよ、“アーヤに会って仲直りしたーーい”って」

「は！？だから違ぇって……」

「あ！！俺もう降りなきゃ！じゃあね上杉。
仲直りしたいの俺もだから、何か方法考えといて！」

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