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通り雨だったらしく、しばらくすると雨は上がり、夕焼け空が広がっていた。
仁人「うわぁ…綺麗な夕焼け空だ。まるで…まる…で…。……?」
仁人父「ん?まるで、なんだ?」
仁人「うん?さぁ…何だったっけ…」
仁人父「はぁ?お前、なんか今日ちょっと変だぞ?」
そんなこと、父に言われなくてもわかっているのだ。
何だか変だ。
心の奥底で、何かがずっと引っかかっている感じ。
でも、それが何なのかまるで分からない。
仁人父「あ、しまった!今日は俺が夕飯の支度するんだった!母さんにまたどやされる!」
慌てた声を上げて、父は雨上がりの畑を飛び越えて、家の方へ駆けて行く。
今はあんなだけど、昔は城の警護をする立派な兵士だった、らしい。
だから、体力には自信があるのだろう。
と、思っていたのだが、家の玄関に辿り着く頃には、父は酸欠状態でひーひー息を切らしていた。
仁人「あーあー、もういい歳なのに無茶するから…」
仁人父「う、うるへえ…。ヒュー…ヒュー…」
仁人「仕方ないなぁ…。なぁ、父さんに酸素を…」
また私は、無意識に誰かを呼ぼうとしていた。
誰もいないはずの自分の背後を振り返り、誰かを呼ぼうとしているのだ。
何なんだ…何なんだ一体?!
不安に駆られた私はその日の夕食時、両親にそのことを話してみた。
仁人父「はは、そりゃ思春期じゃねえのか?」
仁人母「そうそう、考え過ぎよ」
仁人「笑い事じゃないよ、まったく。でも、なんだかこう…モヤモヤするっていうか…まるで心と体がすれ違ってるような、食い違ってるような…」
そう、もっと言うなら、何か大切な何かに気が付いていないような…
忘れてしまっているような…
今の自分が、自分ではないような…
いや、そんなはずはないのだが、そんな気がするというだけなのだが。
しかし、その"気がする"が、今とても不快なのだ。
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作者名:milkssss | 作成日時:2019年12月14日 18時