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瑞生「だ、太智…?太智!!いつも嫌って程うるさいくせに、何黙ってるんだよ?!お、お願いだから…返事してくれよ!!太智!!!」
舜太「や、やめてや…。やめてやそんな冗談!!」
柔太朗「ダメだ…駄目だ太智!!!いくな!!!目を開けろ!!太智!!!」
泣き叫ぶ三人の涙が、太智の体を濡らしていく。
仁人「あ…あぁあ…あああああああ!!!」
仁人もその横で、床に額をこすりつけて泣き叫んだ。
琉弥「こんなの…嘘だ…。絶対…絶対…諦めない…。諦めるもんか…!!」
琉弥は泣きながら、太智の動かなくなった体に、心臓マッサージや人工呼吸を行う。
必死に、たとえそれが、無駄だとわかっていても…。
その後ろで一人、部屋を後にする人影があった。
柔太朗「こんな時に…どこ行くつもりだ…。勇斗」
勇斗「……」
仁人「っ!」
後ろの様子に、仁人も振り返って勇斗の方を見る。
勇斗はすでに背を向けて扉の前に立ってドアノブに手をかけていた。
仁人「行くな、勇斗…」
仁人は、涙で真っ赤になった目で勇斗の背中をにらみつけた。
勇斗「最初から、俺が"こうしてれば"よかったんだ…」
仁人「やめろ…!太智がどういう想いであそこに立っていたと思ってるんだ!!今、勇斗がそんなことをしたら、太智に対する
勇斗「いいや…。俺ならできた…。俺にしかできなかった…。なんでいっつも俺は…こんなに気づくのが遅いんだ…」
そう言って勇斗は部屋を出ていった。
仁人と柔太朗もその後を追って部屋を出ていく。
仁人「待て!!」
勇斗「……」
瑞生「君の考えそうなことはもうわかってる。勇斗、君一人の問題じゃないんだ、これは」
すると、涙を拭いながら瑞生も部屋から出てきた。
勇斗「なら、尚更だ。俺が初めから"そう"やっておけば、俺一人の問題で済んだんだ…。でも、もう俺一人の問題じゃない…太智を巻き込んじまった…」
柔太朗「だからって、今更お前一人で全部背負うつもりか…?
勇斗「そう、今更だ。今更、"何人増えたところで"何も変わらない」
仁人「!?」
柔太朗「っ!」
瑞生「…!!」
三人は、急に息ができなくなり、その場でうずくまる。
勇斗が静かにこの場の酸素を奪っていく。
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作者名:milkssss | 作成日時:2019年10月7日 16時