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松明の明かりを、遠くの方へ向けてみる。
真っ暗な森がぼやっと浮かび上がる。
舜太「うーん…なんも見えへんね…」
舜太は先の見えない森を見つめながら、眉をひそめた。
仁人「せめて、この毒蜘蛛の住む森を抜けることさえできれば…」
自分たちも、いつ毒蜘蛛に噛まれるかわからない。
早く、この森を抜けてしまいたいのだが、道に迷い、数時間はこの森を彷徨っている。
「もし、そこの方々」
勇斗「ひぎゃああああ!?」
舜太「うばああああ!?」
太智「にひゃああああ?!」
仁人「びやああああ?!」
瑞生「…」
勇者たちは、急に後ろから聞こえてきた知らない声に、飛び上がった。
「お、驚かせてしまって申し訳ありません…」
勇者たちの前には、長い黒髪を揺らめかせ、薄い紫の着物を身にまとった女性が立っていた。
その手には
瑞生「うちの雑音たちがすみません。…あなたは?」
仁人「雑音のひとまとめにされた?!」
「この近くの村で旅館の女将をしております。もしかしたら、この森で迷っておられるのかと思いまして…。無礼を承知でお声掛けさせていただいた次第です…」
その女性は薄い笑みを浮かべると、頭を下げてきた。
仁人「この近くに村が?!」
女将「はい…。もしよろしければ、ご案内いたしましょうか?旅館には空き部屋もあります故、お泊りになられては…?」
仁人「ほ、本当ですか?!でも、私たちは本当は七人いるんです…。今は理由があって五人しかいませんが…」
女将「構いませんよ…。何人でも…」
長い髪の隙間から、女将さんの笑みが見えた。
仁人「そうですか…。良かった。では、お願いできますか?」
これでこの森を抜けられる。
しかも、村があって宿まで。
柔太朗をようやく暖かい布団の上で、休ませてあげられる。
仁人達は安堵の表情を浮かべ、その女将さんについて行くことにした。
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作者名:milkssss | 作成日時:2019年9月23日 19時