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仁人「静かにしてくれ…!瑞生の声が、聞こえないだろ…!」
勇斗「仁人…お前…」
仁人「違うんだよ…。こうやって、皆が困った顔見て本当は笑ってるんだよ!それで、実はどっきりでしたって言って起きてくるから!瑞生ってそういうやつだっただろ?!」
舜太「仁人君…」
仁人「そうだよ…。なぁ、もういいだろ瑞生!皆びっくりしたよ!だから、なあ!!!瑞生!!!」
仁人は、動くことのない瑞生の体を大きく揺さぶる。
その度に、地面に広がる血だまりが波打って、仁人の膝を赤く染めていった。
勇斗「もう…もうやめろ、仁人…!」
勇斗は仁人の腕を抑えつけた。
仁人「うるさい!!離せ!!」
しかし、仁人は勇斗の手を振り払い、再び瑞生に手を伸ばす。
勇斗「…いい加減にしろよ!!!」
そう言って勇斗は仁人を無理やり瑞生から引き離し、襟をつかんで立ち上がらせて自分の方を向かせた。
勇斗「しっかりしろよ!!お前がそんなんでどうするんだ!!」
仁人「私はしっかりしてる!!どうかしてるのはお前の方だ!!!邪魔するな!!!」
そう叫んだ仁人の頬を、勇斗は思い切り殴りつけた。
そのまま仁人は吹き飛び、地面に勢い良く倒れこんだ。
勇斗「お前だけが辛いと思うな!!!」
勇斗のその叫びに、仁人は倒れた体を少し起こし、辺りを見回してみる。
肩で息をする勇斗の目は真っ赤に染まり、涙が浮かんでいる。
その隣では、琉弥と舜太が顔をくしゃくしゃにして、大粒の涙を流して、まるで子供のように肩を震わせていた。
仁人「…」
瑞生は、仁人と琉弥を水晶玉の中に封印し、スロースの目を欺いて命を守ってくれた。
そして、スロースが諦めていなくなるまで、二人を封印した水晶玉を必死に抱きかかえて、最期まで守り抜いたのだ。
でも、仲間を守るために、自分が犠牲になるんじゃ、何の意味もないじゃないか…。
仁人はそのまま仰向けになって体を倒すと、腕で顔を覆った。
色々な感情が溢れだし、涙が止まらない。
辛い、寂しい、悲しい、悔しい…。
その時、薄暗い森に光が差し込み、瑞生の体を照らし出した。
神「このままにしておいては、少々可哀想じゃろうて…」
光りに乗って、神が降り立つ。
そして、神の手が瑞生の水晶玉に触れると、瑞生の体は静かに水晶玉に吸い込まれていった。
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作者名:milkssss | 作成日時:2019年8月5日 16時