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「今日もここにいた」
眩しいほどに白い長そでのブラウス。赤いリボンは、白い肌によく映える。
紺色のチェックのスカートがふんわりと揺れて、駆け寄ってきた。
胸につけた『立花』の名札が躍る。
「屋上が好きだね、黒木君」
貴和は、上体を起こして座りなおしながら、うっすらと笑う。
「好きだよ。
誰にも邪魔されない空間だからね」
言外に皮肉の意を込めたのだが、気づいているのかいないのか、けろっとした顔で、彩は「ふーん」と頷いた。
・
貴和は、屋上が好きだった。
授業に出るべき時間も、教師が面倒ごとを避けてか黙認することに甘えて、よくフケてここにくる。
高校3年生という大事な時期であっても、生来大抵の事は人より優れてできるため、あまり困ることもない。
男子にしては長い髪に、長身、整った顔立ち、群れない性格、そしてよくサボる。
それらの事実から、貴和が「不良」として敬遠されるのに、そう時間はかからなかった。
友人関係は広いが、たいして深いものではない。
そして、その「不良」のレッテルを張られている貴和の横に平然と座っているのは、貴和のクラスメイト、立花彩。
クラスメイトと言っても、教室で会話をしたことはほとんどない。
彼女と初めて言葉を交わしたのは、図書室だった。
昼寝がしたくて向かった図書室。静かで落ち着く空間に、彼女はいた。
小さなその背を精一杯のばして、棚の上の方にある本を取ろうとしている。
顔を真っ赤にさせてふんばる彼女の姿に、思わず手が伸びてしまった。
……なんのテンプレ展開だ、と呆れてしまう。王道中の王道だ。
自分でも心の中で突っ込んだ。嫌な予感がする。昼寝は諦めてさっさと帰ろう。
…その嫌な予感は的中し、それ以来、この小動物の様な女子になつかれてしまっていた。
といっても、彼女がやってくるのは、昼休みと放課後の数時間ほどだけ。
授業中にくることは一切なく(何度か授業に参加したときに見た彼女の姿は酷く真面目だったため、そういう性格ではないのだろう)、また、来ても一言二言 言葉を交わすだけで、それ以外は穏やかに空を見たりしている、そんな不思議な子だった。
いてもいなくても変わらない、そう判断してからは、そう彩を邪険に扱う事もなくなった。
別に、自分のテリトリーに入ることを許しているわけではない。
時々、再確認するかのように、そう心の中で呟く。
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加奈 - あやちゃん、どんな顔してるんかな?あいたいな。 (2020年3月4日 13時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 黒木〜! (2020年3月4日 13時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - 優愛さん» 返信遅くなってしまってごめんなさい。コメントありがとうございます。黒彩、私も大好きです(^^) (2019年1月3日 0時) (レス) id: a28dd52497 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - tamanyan さん» 返信大変遅くなってしまい申し訳ないです。応援の言葉ありがとうございます。近々、時間が取れ次第更新する予定です。 (2019年1月3日 0時) (レス) id: a28dd52497 (このIDを非表示/違反報告)
優愛 - ヤバい!おもしろい!更新楽しみにしてます!黒木×彩!もう大好物ですよ〜 (2018年9月26日 5時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
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