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四十三輪 ページ44

夏の終わりを感じさせる少し冷たい空気が、
私らの元に一気に吹き付けられる。
リナが慌ててスカートを押さえ、反射的に目を逸らした。
最後の階段を上がり、屋上に一歩を踏み込んで静かにドアを閉める。
流石にこの時間は、誰もおらんみたいやな。
風が止み、二人で周りを見回しながら歩く。
スカートから離れた手を握ると、
彼女が私にしがみつく様に体を私の腕に寄せた。
あ「ちょっと、寒かね。」
『Oui.でもアルトいるから平気。』
そんな会話をしながら、意外と広いそこを歩き回る。
校庭が一望出来るスペースで立ち止まり、
設置されとる柵から下を眺める。
『わー、高いネ!でも、ちょっと怖いヨ…。』
あ「本当やね。確かにこれは足竦むな。」
寄せられた温もりが、少し強くなった。
あ「…ジュース、飲もか。」
『Oui!』
私は彼女の感じる恐怖を少しでも取り払う為、
手にしとる飲み物に気を散らした。

ペットボトルの蓋を開け、
中のカフェオレを一口飲んで抜群の景色を見渡す。
その場面だけ切り取ったら何て贅沢な時間の過ごし方やろう。
隣にいるリナの飲み物はローズヒップティーやけん、
私より明らかに贅沢や。
しかもそれが絵になるんやから凄い。
『…む、さっきからワタシばっかり見テル。』
あ「…ああ、ごめん。」
意図せずして、見惚れてしまっとった様や。
『何で謝るノ?ワタシだってアルトの事見てたノニ。』
きょとんと、そしてあっさりと爆弾を放り投げてくるリナ。
おかげで自分で顔が赤くなっていくのを感じたやないか。
誤魔化す為にか、自分の中で気を落ち着かせる為か。
私は持っとる二つの飲み物を足元に置き、彼女の背後に回る。
『アルト?』
あ「今はこっち見んで良か。景色だけ見とって。」
今の状態で顔でも見られたら、私はどうなるか分からん。
景色を見とる彼女を、後ろから抱き締める。
これなら顔見られんで済むやろ。
『ワタシも、アルトとギューってしたイ。』
あ「今は、せんで良か。」
そう答えるんが精一杯やった。
あ「リナ。言いたい事があるけん、聞いとってくれる?」
『Oui.何?』
たっぷりと間を溜め、言葉を紡ぐ。
あ「……私と、付き合って下さい。」
瞬間、空気が止まった様な気がした。
『…フフ、ウフフッ…!』
あ「何で笑うんよ。こっちは真剣やのに。」
『だってアルト、Tu as du charmeだモン!』
あ「どう言う意味や。」
『すっごいカッコイイ!』
止まった空気が、一気に動き出す。
同時に鼓動も早くなり、顔の赤みが増した。

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月3日 20時

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